【月刊E・12月号】エントロピーは増大するけれど…
「エントロピー(乱雑さ)は常に増大する」という物理学の法則をいつ、どこで学んだのか、定かには思い出せない。でも終生、忘れられない言葉となった。理由は単純明快。どうあがいても部屋はすぐに散らかるなどと、掃除や片付け嫌いを言い訳するには、すこぶる都合がいいフレーズなのだ。
ところがここに来て、全く畑違いの格言が頭から離れず、いつも耳元でささやく声がする。「いいか、寄る年波には勝てないぞ」と。
墓場まで持って行くことはできないと思えば次第に、かばんや靴への物欲がうせてきた。さらに、コロナ禍で再ブームとなった「断捨離」に便乗する形で、今は本棚の整理を少しずつ始めたところ。
これが結構な難敵なのだ。書店をのぞくと「いま買わなければ廃刊になる」との強迫観念に襲われる。公立図書館が休みの日に限って仕事で急に専門書が必要になるという苦い経験が頭をよぎる。
そうして常に、物欲は先走り、エントロピーは増大していく―。
(ここまで 405文字/記事全文 1548文字)

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