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税制改正大綱 格差拡大、放置するのか

2020/12/15 6:47

 自民、公明両党が2021年度の税制改正大綱をまとめた。

 菅義偉首相が看板政策に掲げるデジタル化や「脱炭素」化に取り組む企業を減税で後押しするほか、消費税増税対策で導入した負担軽減策を軒並み延長する。固定資産税は地価上昇に伴う土地の評価額を据え置き、住宅ローン減税やエコカー減税の期間も延ばす。

 新型コロナウイルスの感染拡大が経済に深刻な影を落とす中、暮らしの負担増を回避しながら需要を喚起したい狙いなのだろう。

 気になるのは、新たな投資減税など、業界団体の要望を丸のみしたような企業向けの優遇策が目立つことだ。

 コロナ後の経済構造の転換に向け、その土台を築くための企業支援は、一定に必要なのかもしれない。しかしいま注力すべきは、生活困窮者の負担軽減策ではないか。

 そもそも税制改正には、所得を再配分して社会のひずみを正したり、歳入を確保したりする大きな役割があるはずだ。

 税制改正の作業は年1回の貴重な機会だけに、コロナによる打撃という喫緊の課題に取り組みながら、構造的な問題にも広く目を配り、検討する姿勢が欠かせない。

 貧富の差の拡大はかねて重要な政策課題になっていたが、コロナ禍でさらに顕在化している。飲食・宿泊業や観光業などで非正規雇用の人を中心に、解雇や雇い止めで生活に困窮するケースが増えている。

 一方、株価はワクチン開発による景気再浮上の期待などから堅調だ。株式に投資できる富裕層の資産は増えているものの、配当や売却益など金融所得への課税税率は低いままだ。収入に応じて税率が最高45%まで上がる所得税と比べ、富裕層に有利な仕組みと言えよう。

 コロナ禍で打撃を受け、賃金は伸び悩み、賞与が支給されない業種も多い。これ以上、格差を広げないためにも、金融所得への課税強化などを検討する必要があるのではないか。

 固定資産税の据え置きや、住宅ローンやエコカーの減税にしても、持っていない人に恩恵はない。税制改正が、格差是正に逆行している。

 法人税では、「脱炭素」や「デジタル」の関連投資の一部を差し引く措置などを創設する。中小企業再編を促す税制も盛り込んで、合併・買収(M&A)をする時の税負担も軽減する。コロナ禍をしのぎながら、菅首相肝いりの政策へ誘導したい狙いなのだろう。

 ただ、税収減による財政への悪影響には目をつぶったままでいいのだろうか。コロナ禍で進められた改正の作業は「負担軽減ありき」で財源確保を巡る議論は低調だったといえる。

 20年度は一般会計税収が、コロナ禍による企業業績の悪化などから当初見込みより8兆円下振れする見通しだ。赤字国債の追加発行は避けられず、財政健全化はますます遠のく。議論の先送りは許されない。

 企業や富裕層を優遇する政策は前政権の路線を受け継ぐものだ。しかしそれで景気が良くなったという実感は乏しい。

 まずは思い切った所得の再配分で格差を是正しなければならない。その上で将来につけを回さない方策を検討すべきだ。 

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