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GoToトラベル中断へ 政権揺るがす不手際だ

2020/12/16 6:45

 国の観光支援事業「Go To トラベル」が28日から来年1月11日まで、全国一斉に中断されることになった。旅行、宿泊など関連業界にとっては大きな打撃だが、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めが掛からない現状が立ちはだかる。

 重症者の治療には多くの医療従事者が必要だ。地域によっては自衛隊の応援を求めなければならないほど看護師が不足している上、年末年始で医療体制が縮小すれば、他の疾病も含めて救える命も救えなくなる。

 むしろ、おとといの菅義偉首相の決断は遅きに失したのではないか。28日からの実施も、前倒しする判断を求めたい。

 首相は数日前までは「いつの間にかGoToが悪いことになっている」とかたくなな姿勢だったが、複数の世論調査がはじき出した内閣支持率の低下に危機感を覚えたのだろうか。コロナ対策の不手際が、政権を揺るがしているともいえよう。

 政権が11月25日に「勝負の3週間」を宣言した後も、感染が拡大する都市部の人出は減ることがなく、12月12日には新規感染者が3千人を突破した。「勝負の3週間」が口先だけで、気の緩みを引き締める方向に働かなかったというほかない。

 仮にGoToキャンペーン自体は景気浮揚に一定の効果があるとしても、運用を誤っては逆効果ではないのか。専門家や医師から一時停止を検討するよう、再三提言があっても「まだそこは考えていない」と首相はかわしてきた。どのような状況で一時停止し、どのような状況で再開するのか。この機に明確な基準を示すべきだろう。

 GoToキャンペーンが市民感情に影を落としていることも気になる。おととい本紙編集局が無料通信アプリLINE(ライン)を通じて意見を募ると、2時間ほどで約350件寄せられ、一時停止の決定の遅れを批判する声が大半を占めた。

 この中で介護福祉士の男性は「やっと停止かという思い。命がないと経済も回らない」と漏らし、介護職の女性は「私たちがしんどい思いをしているのに税金で旅するなんて、と不満がたまっていた」と明かす。直接給付と異なり、旅行代金、飲食代金などの割引を税金で穴埋めする事業は不公平感を募らせることも忘れてはなるまい。

 一方で旅行、宿泊など関連業界にとっては書き入れ時に売り上げのダウンを招くばかりか、キャンセルの対応にも追われることになる。赤羽一嘉国土交通相はキャンセルを受けた事業者への補償を従来の35%から50%に引き上げると表明した。

 関連業界にとって一時停止は青天のへきれきであり、政権は抜かりなく手を打ってほしい。ただ本紙のLINEには「キャンセル料を国が持つことを当たり前にしてほしくない」という意見も寄せられた。不手際を税金で穴埋めすることへの批判も政権は受け止めるべきだ。

 飲食支援事業「Go To イート」を巡っては、来年の食事券の追加販売や現行の食事券の利用期限延長などが打ち出された。特定の時期に購入や利用が集中したり、事業終了後に反動減が起きたりする事態を避けなければなるまい。コロナの終息が見通せない以上、個人消費の過度な「先食い」を避ける地道な支援策が求められる。 

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