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パリ協定5年 日米欧の歩調そろえよ

2020/12/17 6:10

 「お帰りなさい」と、国際社会から迎えられよう。

 地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」に戻ると公約している米国のバイデン前副大統領が、次期大統領に確定した。温室効果ガスとして知られる二酸化炭素(CO2)の排出量で、中国に次ぐ世界2位という大国の復帰が近づいた。

 新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)によって、国際社会が今ほど、心を合わせる必要を痛感している時はあるまい。温暖化防止も、トランプ現政権のような「米国一国主義」で立ちゆかないことは明らかだろう。国際協調を重んじ、先頭で地球規模の課題の解決に当たってもらいたい。

 「パリ協定」は2015年12月、パリで開かれた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択された。97年のCOP3での「京都議定書」に代わる国際協定で、産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑えることを大目標に掲げてきた。そのため、今世紀後半に温室効果ガス排出量を世界で実質ゼロにする。

 というのも14年、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が衝撃的な報告書を発表したからだ。気温上昇で居住地を追われたり貧困の悪化から紛争の火種が増えたりするなど、温暖化は人間の安全保障を脅かすと初めて指摘した。

 にもかかわらず、トランプ政権下で米国は協定を昨年離脱していた。目標達成に向け、早急な対策強化が求められる。

 協定採択から5年を記念し、国連が先週催したオンライン会合では、各国の首脳が競うように「脱炭素」化の新たな目標を打ち出した。参加国全てが自主的に削減目標を掲げ、段階的に引き上げていくという、本来あるべき流れを取り戻しつつある。米国の方針転換を見据えた動きでもあるのだろう。

 50年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする―。パリ協定を果たせる水準を目標に掲げたのは欧州連合(EU)をはじめ、120カ国以上に及ぶ。

 遅まきながら、菅義偉首相も先のオンライン会合で50年ゼロ目標を表明した。これで日米欧の主要先進国の足並みがそろうとすれば、心強い。

 日本国内は近年、豪雨や台風といった気象災害に相次いで見舞われている。だが、政府は今年3月、排出目標をなぜか現行通りの「30年度までに13年度比26%減」に据え置いた。

 菅首相は、50年ゼロ目標を口約束に終わらせてはなるまい。自治体や企業の取り組み方策を示す「地球温暖化対策計画」や「エネルギー基本計画」で、持続可能な、より高いハードルを設ける必要がある。

 今年11月に開催予定だったCOP26は、新型コロナの感染拡大で1年延期となった。焦点である目標上積みは、国際協調の潮流を太く、強くする意味合いも担っていよう。

 CO2排出1位の中国も、太陽光発電と風力発電の設備容量を現在の3倍に増やし、「30年までに排出の05年比65%減」とする目標を表明。実質ゼロも60年までの達成を明言した。アフリカなどの発展途上国も巻き込み、コロナ禍からグリーンリカバリー(緑の復興)に向かう道筋をいかに描くのか。日米欧の共同歩調が欠かせない。

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