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学術会議自民提言 任命拒否の説明どこへ

2020/12/18 7:00

 自民党のプロジェクトチームが「日本学術会議の改革に向けた提言」をまとめ、政府に提出した。2023年をめどに政府から独立した法人格を持つ新組織への移行を求めている。

 議論の発端は、菅義偉首相による会員の任命拒否問題だったはずである。ところが提言はこの問題に触れていない。学術会議の組織の在り方に議論をすり替え、批判から目をそらす狙いなのだろうか。与党といえども政府に物申さなければ「提言」とはいえまい。

 それにしてもなぜ新組織なのか。学術会議を政府から切り離し、任命拒否問題をうやむやにしたい意図が透ける。

 提言は学術会議が「政策のための科学」という機能を十分に果たしているとは言い難い―などと批判し「政治や行政が抱える課題や時間軸等を共有し、実現可能な質の高い政策提言を」と求める。政権の意向をくんだ研究をせよというのだろう。

 しかし学術会議は、日本学術会議法に基づき、政府の組織でありながら一定の独立性を持つ特別の機関だ。科学者が戦争に加担した反省から軍事研究はしないという方針を貫いてきた。

 1949年の発足以来、時には政府にとって耳の痛い提言もしてきた。2015年に防衛省が研究助成への公募を始めると「政府による介入が著しい」として、改めて軍事研究に反対する声明をまとめている。

 提言は軍事研究への言及を避けているものの、自民党内には意に沿わぬ学術会議に対する不満がくすぶっているのだろう。

 菅首相に任命拒否された会員候補6人はいずれも歴史など人文・社会科学系の研究者だ。過去の政府批判が拒否の理由ではないかと国会でも追及された。

 首相は「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動を求める観点」「多様性の確保」などと言葉を並べたが、理由になっていない。揚げ句に「人事の経緯は言えない」と、まともに答えないままである。

 そんな政権と歩調を合わせるように自民党は学術会議の組織改革の必要性を主張し始めた。2カ月足らずで急ごしらえの提言を見ると、最初から学術会議をつぶすことが狙いだったのではないかと疑いたくなる。

 これに対し、学術会議は在り方に関する中間報告をまとめ政府に提出した。現行の組織形態は国を代表する「ナショナルアカデミー」に必要な要件をすべて満たすと主張している。つまり新組織にする必要はないということだ。

 学術会議はすでに6人の任命を求める要望書も提出しているが、政府から回答はないという。梶田隆章会長が「いまだに進展がなく、大変遺憾」と述べるのももっともだろう。

 改革論議をするにしても、従来の政府見解を変えてまで6人を任命拒否した理由をまず明らかにする必要がある。できないのなら拒否を撤回すべきだ。

 15年に学術会議の在り方を検討した内閣府の有識者会議は「政策について批判的なものも含めて科学的エビデンスに基づき見解を打ち出していく機能が重要」とし、組織形態を変える「積極的な理由は見いだしにくい」としている。自民党の提言はこうした歴史的経緯への考察も欠く。国の特別機関として、独立を保障してきた意味を再確認せねばならない。

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