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決別 金権政治

「まさか溝手さんまで…」 金頼みの姿勢大差なく【決別 金権政治】<第3部・選挙とカネ>(1)

2020/12/19 22:55
参院選の集会で演説する溝手氏(2019年7月18日、広島市西区)

参院選の集会で演説する溝手氏(2019年7月18日、広島市西区)

 昨夏の参院選広島選挙区の大規模買収事件を機に、国会議員と地方議員の関係があらためて問われている。広島県議らに現金を渡したとして公選法違反罪に問われた元法相の河井克行(57)=衆院広島3区=と妻案里(47)=参院広島=だけでなく、相手陣営の溝手顕正(78)側も県議へ資金提供をしていたことが明らかとなったからだ。「選挙とカネ」の背景を追う。

 「表の金か、裏の金かは関係ない。どんな名目でも選挙前に渡すのはまずいと思わんかったんか…」。溝手の地元、三原市で70代の男性がため息をついた。溝手の後援会員として長年応援してきた。いま、やるせなさが募る。

 2019年7月の参院選。男性は自民党現職だった溝手を支援したが、同党公認の新人案里を相手に予想外の敗北を喫した。しかし河井夫妻は今年6月、地方議員ら94人に現金を配ったとして逮捕された。「あっちは、こんな金権選挙をやっとったんか」。男性は驚きつつ、予期せぬ敗北の理由として納得した感もあった。

 ▽支援者もがく然

 ところが今年11月、溝手側も参院選の1カ月前に、元県議会議長の奥原信也(78)=呉市=が関わる党支部に50万円を提供していたことが中国新聞の報道で発覚した。奥原は河井側からも計200万円を受け取ったとされる「被買収者」。「まさか溝手さんまで…」。男性はがく然とした。

 溝手の事務所は「法的に問題ない」と強調する。政治資金規正法が認める政党支部間の資金提供であり、領収書を発行し、政治資金収支報告書にも載せているのが理由だ。

 一方、奥原は中国新聞の取材に「選挙応援を頼む趣旨と感じた」と説明。専門家は「公選法が禁止している買収行為に当たる可能性がある」と指摘した。

 実は溝手側は参院選の2カ月前、広島市議会の自民党系会派の市議にも奥原と同様の形での資金提供を持ち掛けていた。ちょうど河井側が被買収者に現金を配ったとされる時期と重なる。最終的に溝手側は、買収に当たる恐れがあるとして中止したが、金で地方議員の応援を促そうとする姿勢に大差はなかった。

 「手続き上は合法でも『選挙をよろしく』という趣旨以外にないじゃろう」。会派を通じて溝手側から打診を受けた市議は指摘する。克行が現金を持参してきた直後の出来事でもあり「あっち(克行)もやるけえ、こっちも必死なんじゃのうと思うた」と明かす。

 ▽「県議が要求」か

 通常、参院選のある年は自民党県連が夏冬に所属議員へ出す活動費のうち、夏に10万〜60万円程度を「党勢拡大」を目的に増額している。ただ、昨年は参院選が党分裂選挙になった混乱の余波で上積み分の支給が見送られた。このため、溝手側は「県連から流れないので、こちらから流そうと思った」という。

 結局、市議への資金提供は実行されず、溝手側からは奥原だけに活動費として50万円が渡った。この金額は、参院選があった13年と16年に県連から奥原側に振り込まれた活動費の上積み分と同額だった。ある市議はこう推察する。「奥原さんは県連分がないから、自分から溝手陣営に要求したんじゃろう。金をもらわんと手伝わん議員もおる」

 溝手側に要求したのか―。中国新聞の取材に、奥原は「一方的に振り込まれた」と説明している。(敬称・呼称略)

 <クリック>参院選広島選挙区での大規模買収事件 自民党本部が改選2議席の独占を狙い、党広島県連の主流派が推す現職の溝手顕正氏に加え、県議だった河井案里被告を擁立。野党系の無所属現職の森本真治氏を含めた激戦の末、森本氏と案里被告が当選し、溝手氏は落選した。その後、発覚した大規模買収事件では、案里被告の夫の克行被告が参院選の前後に地方議員や後援会員ら100人に計2901万円を渡したとして起訴された。うち5人は案里被告と共謀し計170万円を渡したとされる。

【決別 金権政治】
<第3部 選挙とカネ>
(1)「まさか溝手さんまで…」 金頼みの姿勢大差なく
(2)地方議員の人脈、票直結 国会議員 つなぎ役期待
(3)虚偽記載の疑惑拭えず 宮沢側、具体的説明なく
(4)報告書記載「隠れみの」 買収趣旨「浄化」解釈誤り
(5)千葉参院選で似た構図 自民支部間、80人に1200万円


<第2部 被買収者>
(1)広島県議会、根深い「カネ」 奥原元議長、再び渦中
(2)広島県議、違法知りつつ支援 50万円受領に支持者落胆
(3)唯一の代議士に町側苦慮 前議長「仕返し恐れた」
(4)顔役巻き込み地域に影 「もう活動の資格ない」
(5)大物逃し起訴見送りか 検察、処分の公平性考慮
(6)政治家続投、厳しい視線 専門家「有権者に説明を」


<第1部 巨額の買収事件>
(1)菅氏来援の直前「裏仕事」 克行氏、現金ばらまき
(2)1日で7人に現金 分裂選挙、にじむ焦り
(3)地盤なき地で躍起 「家内頼む」個室授受
(4)統一選でばらまき 「陣中見舞い」「当選祝い」
(5)領収書なき「裏金」 選挙区内は以前から
(6)現金、初当選からか 過去に落選「強い恐怖」
(7)公設秘書2人が加担 「好きなん買いんさい」
(8)案里被告、追及する立場逆転 説明責任を自身も回避

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  •  2019年夏の参院選で河井克行、案里夫妻が100人に計2901万円を配ったとされる買収事件では、選挙に絡んだお金のやり取りが浮き彫りとなりました。令和の時代も変わらない「金権選挙」。皆さんの地域でも耳にしたこと、目にしたことはありませんか。体験、情報、意見をぜひお寄せください。(中国新聞「決別 金権政治」取材班)

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