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コロナ禍の体感

2020/12/20 6:39

 中国山地の鳥取県智頭(ちづ)町にあるパン屋さんで、不思議なことが起きたという。酒種パンに使う麹(こうじ)菌の色がいつもと違う。農薬や排気ガスで空が汚れると赤や黒のカビが現れるのに、今年はきれいな緑色の菌がすぐに採れるらしい▲店の誰もが思い当たった。「やつの影響だ」。コロナ禍で世界経済が滞った半面、空が澄んでいる。麹の色は自然界が送る青信号かもしれない。月刊誌「婦人之(の)友」の最新号に教わった▲それに引き換え、迫り来るウイルスは見えず、気付くのが難しい。広島市の新規感染者数がいつの間にか、10万人当たりで東京都や大阪市を上回り、政令市では最悪レベルとなった▲「大規模災害に匹敵する緊急事態」。市の医師会会長は、そんな例えまで持ち出した。医療崩壊の足音が聞こえるのだろう。ただ、いかんせん今回、「被災地」である医療や介護といった現場を肌身で感じにくい。広島随一の目抜き通りではきのう、開店待ちの人だかりも見えた▲会食を気兼ねする人、しない人。行列で間合いを取る人、平気な人。「密」への温度差が広がったのか。正しく恐れなければ、偏見を生みかねない。不安の体感にも赤や黄の信号が欲しくなる。 

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