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選択的夫婦別姓 反対の主張、説得力ない

2020/12/21 6:00

 政府が近く閣議決定する男女共同参画基本計画案が自民党の意向で書き換えられた。焦点だった「選択的夫婦別姓」は文言自体が削除され、大幅に後退する内容になりそうだ。

 夫婦が望めばそれぞれが結婚前の姓を名乗れる制度で、若い世代を中心に認めてほしいとの声が強まっている。

 政府は今回、導入へ向けて「必要な対応を進める」と前向きな当初案を示していたが、伝統的な家族観を重視する反対派の議員らが反発。「さらなる検討を進める」と修正し、「夫婦別姓」の言葉まで削った。

 代わりに「家族の一体感や子どもへの影響」への考慮など、反対派の主張が盛り込まれた。導入に前向きな表現もあった政府の当初案は骨抜きにされた。

 自民党内でも賛否は割れている。反対派は、夫婦別姓を認めれば「家族の絆が壊れ、子どもに悪影響が及ぶ」などと唱えている。しかし、強制的に同姓にしなければ家族が壊れるとの主張に説得力はない。時代錯誤も甚だしいと言わざるを得ない。

 価値観が多様化する中、可能な限り選択肢を用意することが重要である。さまざまな家族のあり方を尊重する社会であれば、子どもに悪影響はないはずだ。反対派の主張をやすやすと受け入れてしまう自民党の体質にも問題があろう。

 選択的夫婦別姓を巡っては、1996年に法務省の法制審議会が制度を導入するよう答申したが、自民党の反対で法案提出に至っていない。2015年には、最高裁が国会での議論を促したが、進展はなかった。

 結婚後も働き続ける女性が増え、結婚前の姓を引き続き使えないために仕事に支障が出ているとの声は多い。

 愛着のある姓を変えたくない人や、一人っ子同士で「実家の姓を残したい」と望む人もいる。改姓を理由に結婚に踏み切れない女性も少なくないとされる。少子化の観点からも見過ごせない問題だ。

 民法750条は、夫婦は婚姻時に夫または妻の姓のどちらかを名乗るよう規定する。ただ実際に姓を改めるのは圧倒的に女性の方が多い。全体の96%に上る現状は公平とは言えず、時代遅れの女性差別との批判がやまないのも当然だろう。

 法律で夫婦同姓を義務付けている国は日本ぐらいとされ、国連女性差別撤廃委員会は日本政府に再三是正を勧告している。にもかかわらず、四半世紀近くにわたって議論を棚上げにしてきた政府と国会の責任は重い。

 最高裁は今月、夫婦別姓を認めず、婚姻届を受理しないのは憲法に違反すると訴えた3件の家事審判について、大法廷で審理すると決めた。改めて憲法判断を示す可能性がある。

 選択的夫婦別姓は「選択的」という言葉にあるように、夫婦同姓の選択も自由だ。同姓にすることで家族の一体感を得られると思う人はそちらを選べばいいだけだ。反対する論理的な理由は見当たらない。

 菅義偉首相もかつて別姓の導入に前向きな発言をし、11月の参院予算委員会で「政治家として申し上げたことには責任がある」と答弁した。

 改姓を強いられることで、不自由さや痛みを感じている人がいる。解決策を示せるよう「責任」を果たすべきだ。

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