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政府予算案 「命と生活」守る中身か

2020/12/22 6:36

 106兆円を超えて過去最大となる2021年度予算案を、政府がきのう閣議決定した。年明けの通常国会で、この予算案より先に20年度第3次補正予算案を成立させ、21年度につなげる。「15カ月予算」というのが実質で、一般会計の歳出は合わせて125兆円にも上る。

 21年度予算案で特に目立つのは、少子高齢化に伴う社会保障費と防衛費の増大である。新型コロナウイルスの感染拡大への対応に、予備費5兆円も計上した。第3次補正予算案には、国土強靱(きょうじん)化へ向けた公共事業費などを盛っている。

 「国民の命と暮らしを守る」と菅義偉首相は強調してきた。コロナ対策に多くを充てざるを得ないのは理解できる。防災・減災のため国土強靱化も進めるのに越したことはあるまい。

 とはいえ、コロナ禍の今は、優先すべきものに絞って盛り込むべきときだ。ここまで巨額の予算を組み、将来にわたり安心して暮らせる国づくりができるのか。危ういと言わざるを得ない。というのも膨大な借金頼みの予算だからだ。

 コロナによる企業の業績悪化を踏まえ、税収を20年度当初予算より約6兆円減と見込んでいる。歳入が足りない分をどうするか。またも国債発行、つまり借金で補うという。

 赤字国債を約37兆円、建設国債を約6兆円、計43兆円以上の新規国債を発行する。20年度の当初予算に比べ、11兆円も増えた。新規国債発行額が前年度を上回るのは11年ぶりだ。国債が歳入全体の4割を占める。

 その結果、21年度末には長期債務残高が1209兆円にも膨らんでしまう。国内総生産(GDP)の倍以上である。財政健全化を図るつもりはないのか。今回の予算編成でも、健全化に向けた議論や努力がなされたとは思えない。

 疑念を抱かせるものに、まず防衛費がある。9年連続で過去最大を更新して、5兆3400億円。イージス・システム搭載艦2隻の建造へ調査費が盛られた。運用上の問題や必要性への疑問も指摘されているのに、お構いなしなのか。

 コロナ対策の予備費にも疑問が残る。すでに20年度の第2次補正予算に、コロナ対策として10兆円を付けていた。国会論議を経ずとも政府の裁量で使える予備費だが、果たして使い道は妥当かどうか。情報公開の上、チェックする必要がある。

 「Go To トラベル」に3千億円支出しようとする政府を、今月、野党4党が強く批判。医療崩壊を防ぐ対策に使うように求めていた。

 また菅政権の看板政策であるデジタル化、脱炭素化の推進にも大規模予算を確保している。もちろん必要な支出も多い。しかし、いずれも次世代へのつけ回しとなることを忘れるわけにはいかない。

 菅首相は先日、高齢者の医療費負担増を決めた際、「若い世代の負担抑制は待ったなし」との認識を示したはずだ。しかし税制改正大綱では増税を原則回避。税収回復への道筋や格差是正の手だては示されなかった。

 新たに巨額の借金をして過去最大の予算を組んだものの、コロナ収束は見通せず、財政悪化の深刻度だけが増す―。そんなやりくりはこの国の持続可能性を怪しくするだけだ。 

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