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安倍前首相事情聴取 責任、秘書に押し付けか

2020/12/23 6:59

 安倍晋三前首相がおととい、東京地検特捜部に任意の事情聴取を受けた。自身の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補填(ほてん)問題である。

 行政府の長の時に起きたカネ絡みの疑惑だ。政治への重ね重ねの信頼失墜は避けられない。事態を重く受け止めるべきだ。

 夕食会の収支は、後援会の収支報告書には記載されていなかったため、安倍氏の公設第1秘書が政治資金規正法違反の罪で略式起訴される見込みという。公判に持ち込んで、真実に迫るのが筋ではないか。

 安倍氏本人は関与を否定しており、刑事責任を問うのは難しいとみられている。仮に安倍氏の刑事責任が問われなくても、政治責任は免れられまい。

 というのも、この問題を巡る国会質疑で、事実と異なるとみられる首相時代の答弁は少なくとも118回はあったからだ。しかも説明には不自然さが際立つ。名のあるホテルが会場なのに会費が安すぎる上、参加者個人がホテルと契約していた形式などである。ホテルに確認さえすれば補填に気付いたはずだ。

 にもかかわらず、十分調べないまま「事務所側が補填した事実は全くない」などと答えている。不誠実極まる。国権の最高機関である国会の軽視であり、国民への裏切りでもある。

 秘書の話を妄信していた、と弁解するのかもしれない。しかし責任を秘書に押し付け、「自分は知らなかった」で、幕引きを図ることは許されない。

 補填したという900万円余りを収支報告書に記載もせず、秘書が一人で動かせるのか。そのカネはどこから、どうやって調達したのか。なぜ虚偽の答弁を重ねたのか。安倍氏は謝罪した上で、国民の前で数々の疑問に答えなければならない。納得できる説明ができないなら、議員を即刻辞めるべきである。

 「1強」のおごりか、長期政権の緩みのせいか。不誠実な答弁は安倍政権では顕著に見られた。森友学園への国有地売却を巡る国会質疑では、麻生太郎財務相をはじめ、事実と異なる政府答弁が139回あった。今回さらに、安倍氏本人の答弁の信頼度が地に落ちた意味は重い。

 「桜」や「森友」だけではなく、政治とカネの問題が後を絶たない。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職や、昨年夏の参院選広島選挙区を巡る大規模買収に加え、今月は、2人の農林水産相経験者が、鶏卵生産大手グループの元代表から現金を受け取っていた疑惑が発覚した。

 きのう衆院に議員辞職願を出した吉川貴盛元農相と、内閣官房参与を辞めた西川公也氏である。吉川氏の体調への配慮はあろうが、国民への説明責任を果たすことが求められる。

 安倍氏は、特捜部の捜査が終われば、国会の招致要請に応じる意向を示している。偽証罪に問える証人喚問で、真実を語ってもらわなければならない。野党の力量も問われる。

 ところが自民党は証人喚問には否定的だ。かばうつもりか、非公開にする思惑もある。党総裁であり、安倍政権を官房長官として支えた菅義偉首相の責任が問われよう。金権政治にメスを入れ、うみを出し切れるか。内閣支持率が急落する中、就任から間もなく100日、菅政権の浮沈もかかっている。

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