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昭和を生きたある父子

2020/12/25 6:37

 植木徹誠(てつじょう)という人は若い頃、キリスト教に入信したが、後に僧侶になった。大正の終わり、1926年のきょうクリスマスに息子が生まれる。届け出を親族が忘れ、年が明けて役所へ。戸籍上は昭和2年の生まれとなった▲昭和の「無責任男」植木等である。貧しい家で幼少期に父からお経を教えられて檀家(だんか)も回った。スイスイと世を渡るサラリーマン役が当たったが、まじめな人。「おやじの生き方こそ支離滅裂そのもの」と語っていた▲父の生涯を、著書「夢を食いつづけた男」につづっている。信念の強い人で労働運動、部落解放運動に参加した。何度も検挙、投獄された。それでも戦地へ赴く若者に「戦争は集団殺人だ」「卑怯(ひきょう)と言われようが生きて帰れ」と説く。また捕まった▲戦後、等は出世作となる「スーダラ節」を歌うのを当初、嫌がったそうだ。ところが父は、その歌詞に親鸞の生き方に通じるものを認めた。「分かっちゃいるけど、やめられない」は人間の弱さを言い当てている、と▲型破りながら信念を持って生きた父と子の姿。コロナ禍も重なって生きづらい時代のクリスマスに、ふと思い出した。何があっても生きていこうと元気が湧いてくる。 

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