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安倍前首相の弁明 責任「痛感」聞き飽きた

2020/12/26 6:45

 責任を「痛感」して陳謝しても、責任を取って辞職するという考えはないらしい。

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前日に都内のホテルで開いた夕食会費用を補填(ほてん)していた問題で、安倍氏はきのう衆参両院の議院運営委員会に出席した。これまでの答弁について「結果的に事実に反するものがあった」とし、訂正して陳謝した。

 首相経験者が国会で答弁の誤りについて説明するのも、修正するのも、極めて異例の事態である。安倍氏がこれまで国会を軽視してきたことの表れではないか。衆院調査局によると、事実と異なる安倍氏の答弁は衆参両院で少なくとも118回に上る。秘書のせいにして、口先で謝って済む問題ではない。

 夕食会を巡っては、東京地検特捜部が公設第1秘書を政治資金規正法違反罪で略式起訴し、簡裁が罰金100万円の命令を出した。安倍氏については具体的な関与はなかったとして不起訴処分にした。

 安倍氏はきのうの議院運営委で、政治資金収支報告書に補填分が記載されなかったことについて、あらためて関与を否定した。「私が知らない中で行われていたとはいえ、道義的責任を痛感している」と弁明した。

 「私の政治責任は極めて重い」「深く反省」「真摯(しんし)に受け止めている」などの言葉も連ねていた。だが、納得できた国民はどれほどいるだろう。

 何より巨額の支出を秘書の一存で決められるものなのだろうか。もし安倍氏が知らなかったとしても、行政機関や民間企業なら、部下が問題を起こせば上司は監督責任を問われ、処分を受けるのが当然である。

 そうした視点からきのう野党議員に追及され、「議員辞職に値すると思わないか」と進退を問われた安倍氏は、「信頼を回復するために努力を重ねる」「初心に立ち返り全力を尽くすことで職責を果たす」と、壊れたレコードのように繰り返していた。初心に立ち返る前にまずは目の前にある数々の疑惑について、誠意を持って答えるべきではないか。

 秘書がなぜ補填の事実を安倍氏に伝えなかったのか。後援会による補填費用の出どころはどこなのか―。安倍氏は記者団に「一定の説明責任を果たした」と認識を語っていたが、まだまだ疑問に答えたとはいえない。野党は追及を続けてほしい。

 夕食会の問題だけでは済まない。税金でまかなわれる公的行事の「桜を見る会」をめぐる疑惑も残っている。安倍氏が地元支援者らを数多く招いていたことが、「権力の私物化」と批判されている。公選法にも触れかねない問題だ。マルチ商法をめぐる詐欺事件で逮捕・起訴された元会長の招待や、招待者名簿の不自然な廃棄など、ほかにも数々の疑問がある。

 安倍政権下では、森友・加計学園問題でも、周囲が疑惑を打ち消すように動き、自殺や謝罪に追い込まれるケースが相次いだ。今回も秘書だけが刑事責任を負った。口先だけで「責任」を唱えることを、これ以上許してはなるまい。

 官房長官として安倍氏を擁護した菅義偉首相の責任も問われるべきだ。安倍氏の答弁訂正と陳謝で問題に幕引きできると思うのは大間違いである。

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