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わいせつ教員 子ども守る策、細やかに

2020/12/27 6:44

 教員による児童生徒へのわいせつ事案が後を絶たない。2019年度に全国の公立学校でわいせつ行為やセクハラを理由に処分された教員は273人に上ることが、文部科学省の調査で分かった。最多だった18年度に次ぐ多さで、高止まりの状態が続いている。

 そのうち126人は、勤務校の児童生徒らに対して加害行為に及んでいた。教え導く立場を使って、児童生徒を傷つけることは断じて許されない。性被害は子どもの心に深い傷を残す。政府は、再発防止策はもちろん、未然に防ぐためのあらゆる策を練らなくてはならない。

 文科省は既に、児童生徒にわいせつ行為をした教員を原則として懲戒免職にするよう全国の教育委員会に要請している。しかし処分数の高止まりを見ると、それが加害行為の歯止めになっているとは考えにくい。

 教育職員免許法では、懲戒免職となり教育免許が失効しても3年経過すれば再取得が可能となる。過去には懲戒免職となった人物がその後に別の地域で教員に採用され、再びわいせつ事件を起こした事例がある。

 そうしたことを防ぐため、政府は法改正し、再取得できない期間を無期限にすることで教育現場に戻れないようにすることを検討してきた。年明けの通常国会への法案提出を目指していたが、内閣法制局が個人の権利制限につながるとの見解を示したため、断念するという。

 わいせつ事案での処分歴のある人への免許取得が厳格化されれば、適性を欠く人材を見極める効果が一定に見込めよう。一方で憲法が保障する「職業選択の自由」との兼ね合いもある。

 議論は必要だが、子どもの人権を守ることを最優先に考えなければなるまい。そこで重要になるのは法改正以外の対策だ。

 文科省は教員の懲戒免職情報を官報に掲載する際、わいせつ行為が理由であることを明記する規定を設ける。さらに採用時に懲戒免職の処分歴を確認できる検索システムも見直し、閲覧できる期間を過去3年間から40年間に延長する。

 それでも処分歴のある人を教壇から排除するだけでは、子どもを性被害から守れまい。表面化している事案は「氷山の一角」と考えられるからだ。

 教員と子どもとでは立場や力関係に圧倒的な差がある。子どもが教員から受けた行為を被害だと認識できなかったり、抵抗できなかったり、声を上げられなかったりする事例も多い。

 文科省は毎年の処分件数を公表するだけではなく、潜在している被害についても把握する努力を続けるべきだ。そのためには全国の学校を対象につぶさに実態調査をする必要があろう。

 加害行為が行われた場所は、教室や部活動など学校施設内が多い。こうした構造的な危険性も踏まえ、対策を進めてほしい。教員と生徒が二人きりにならないよう複数の教員が関わるなど、指導体制の検証や意識改革、ルールづくりも要る。

 発生時の調査が不十分なことが、教員による加害行為が減らない要因との指摘もある。現在は学校長や教育委員会が調査主体となるのが通例で、身内である教員に甘くなりがちだという。第三者を交え、子どものSOSを受け止められる体制づくりを急がなくてはならない。

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