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小学校35人学級 教員の質、どう維持する

2020/12/31 6:00

 公立小学校の全学年で1学級の児童数の上限が現行の40人から35人に引き下げられることになった。

 少人数学級の実現は教育現場の悲願だった。まずは一歩前進と評価したい。教育の質を高めることはもちろん、教員の働き方改革になどにつなげる契機としなければならない。

 公立小中学校の1学級の上限人数は1958年施行の義務教育標準法で50人と定められた。80年度以降は40人となり、2011年度から小学1年のみ35人とする法改正が行われた。

 全学年一律での見直しは約40年ぶりだ。21年度に小2を35人とし、5年かけて順次引き下げていく。

 教員が一人一人の子どもと向き合う時間を確保し、きめ細かな指導をするため、現場の少人数化への要望は強かった。ただ学級数が多くなれば、教員数を増やす必要があり、財源確保が大きな壁となってきた。

 今回引き下げに至ったのは、皮肉なことだが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が大きかった。

 子どもたちが健康で安全な学校生活を送るためには、教室で「3密」を避ける必要性が生じたためだ。全国知事会が少人数学級を可能にする教員定数の確保を求める声を上げ、多くの自治体や与党も加勢した。

 こうした世論を背景に、文部科学省は21年度の予算編成に当たって、中学校も含めて30人学級の実現を強く働きかけた。教育効果を疑問視する財務省は消極的な姿勢を崩さなかったが、結局小学校に限って35人学級にすることで落ち着いた。

 ただ少人数化したからといって、豊かな学びが担保されるわけではない。いかに優秀な人材を確保するかが、35人学級の成否を左右する。

 文科省によると、35人学級の導入に伴い、今後5年間で計約1万4千人の教員が新たに必要になるという。

 だが近年、教員のなり手不足が深刻化している。教員採用試験の倍率は低下傾向にあり、とりわけ小学校で顕著だ。受験者数そのものが減り続けており、20年ほど前には10倍を超えていた競争率は全国平均で2倍台まで落ち込んでいる。

 意欲ある人材を確保するには、現場の働き方を見直し、教職の魅力を高めることが求められる。

 少子化が進む一方で、外国籍の子どもをはじめ、さまざまな事情から丁寧な指導が必要な子どもも増えている。教員は授業や指導以外でも、書類作成など事務業務や学校行事の準備、保護者への対応などに追われる。

 多様化する現場と向き合いながら、いじめや不登校にも対処していかなければならない。日々の仕事に忙殺されている現状を改め、教員一人一人が時間と気持ちに余裕を持って働ける環境を整える必要がある。

 国や自治体は処遇の改善はもちろん、教員育成や免許制度の抜本的な見直しを急がなければならない。専門知識のある外部人材やIT機器の活用など、業務削減に向けて検討すべき課題は山積している。

 中学校の学級規模の縮小と、さらなる少人数学級化が今後の課題となる。小学校での35人学級の効果を検証し、豊かな学びにつなげなければならない。

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