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決別 金権政治

地方議員9割「不要」 国会議員からの交付金や寄付金 広島県内、本社アンケート【決別 金権政治】

2020/12/31 23:00

 2019年夏の参院選広島選挙区での大規模買収事件を踏まえ、中国新聞社が広島県内の全地方議員を対象に実施したアンケートで、国会議員が政党支部などを通じて地方議員に提供する交付金や寄付金について、回答者の9割が「必要ない」と答えた。こうした資金提供は法律で認められているが、選挙前にやりとりする議員もおり、専門家の間では「買収に使われかねない」として禁止を求める意見がある。実際には、受け手側の地方議員の大半が必要ないと考えている実態が浮き彫りになった。

 アンケートは県議会と全23市町議会の議員544人を対象とし、82・2%の計447人から回答を得た。

 政党支部などを介して国会議員から地方議員に提供される交付金や寄付金が必要か否かを尋ねた問いに対し、93・7%の419人が「必要ない」と回答。「必要」と答えた18人(4・0%)を大きく上回った。

 ▽「政策を大事に」

 「必要ない」と答えた議員にその理由(複数回答可)を尋ねると、「金ではなく、政治姿勢や政策でのつながりを大事にしたい」が314人(74・9%)で最も多く、「クリーンな政治をしたい」212人(50・6%)、「対等な関係でいたい」112人(26・7%)と続いた。

 「必要」と答えた議員では、18人のうち12人(66・7%)が交付金や寄付金を必要とする理由に「議員報酬では足りず十分な政治活動ができない」を挙げた。

 アンケートでは、交付金や寄付金を受領したことがあるか否かも質問。91・7%の410人が「ない」と答え、「ある」との回答は33人(7・4%)だった。この33人に1回当たりの金額を尋ねると「5万〜10万円未満」が12人で最も多く、「10万〜20万円未満」が8人で続いた。使途は「政治活動や後援会活動」「選挙費用」が目立った。

 政治家は公選法で選挙区内の有権者への寄付が禁じられているが、政党支部などの政治団体同士での資金の授受は、政治資金収支報告書に載せて国民に見える形にするのを条件に政治資金規正法で認められている。政界では夏と冬の年2回出す慣行があり「氷代、餅代」などと呼ばれる。ただ、選挙前に提供した場合は、その時期や趣旨によっては公選法が禁じる買収行為として罪に問われる。

 19年の参院選広島選挙区の大規模買収事件では、地方議員や後援会員ら100人に計2901万円を渡したなどとして元法相の河井克行被告(57)=衆院広島3区=と妻案里被告(47)=参院広島=が公選法違反罪で公判中。検察側は「裏金」を渡したとしている。

 一方で、案里被告と争い、落選した自民党の溝手顕正氏(78)の党支部が参院選の1カ月前に元県議会議長の奥原信也県議関連の党支部に50万円を提供していたことが判明した。政治資金収支報告書に載せていたが、奥原県議は中国新聞の取材に「選挙応援を頼む趣旨と感じた」と説明。専門家は買収罪に当たる可能性があるとしている。

 ▽法改正求める声

 日本大法学部の岩井奉信教授(政治学)は「政党支部を通じて国会議員が地方議員に提供する資金はお歳暮のようなもの。系列の地方議員をつなぎとめて地盤を強化する狙いもあるが、資金提供の時期や趣旨によっては買収に問われかねない」と指摘。法改正をして禁止するよう求める。

 アンケートは全34問で20年12月に実施した。議会別では竹原、三原、三次、庄原、大竹、東広島、安芸高田の7市議会と世羅町議会の全議員が回答。最も低い県議会の回答率は35・9%で、最大会派の自民議連(33人)に所属する県議からの回答はなかった。(「決別 金権政治」取材班)

 <クリック>政党支部 政党が政治活動のために地域ごとに置く拠点。代表には国会議員や地方議員、各種選挙の立候補予定者が就いているケースが多く、政治資金の受け皿になっている。政治家個人の資金管理団体に対する企業・団体献金が癒着の温床になるとして禁止される一方、政党支部では受け取れるため、政治家への企業・団体献金の「抜け道」になっているとも指摘される。

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