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【ヒロシマの空白】黒い雨、解明への道筋は<4>検討会委員の広島大名誉教授・鎌田医師に聞く

2021/1/2 23:16
「黒い雨を浴びた体験者の言葉に向き合うことが出発点になる」と語る鎌田名誉教授

「黒い雨を浴びた体験者の言葉に向き合うことが出発点になる」と語る鎌田名誉教授

 ▽内部被曝を過小評価されてきた 体験者の言葉に耳を傾けねば

 黒い雨の実態解明には何が必要なのか。長年にわたり放射線被曝による後障害の研究に取り組み、国の検討会に委員として参加する広島大の鎌田七男名誉教授(83)に聞いた。

 ―黒い雨の人体への影響をどう見ますか。

 影響があるはずだ。放射性物質を体内に取り込む内部被曝の可能性が過小評価されている。影響が出るには時間がかかるはずだが、その仕組みや特徴はまだ解明されていない。これまでの調査は、あまりに早く結論を導いてしまっている。

 ―1988年の広島県と広島市の専門家会議でも委員を務めました。

 当時は近距離で大量に放射線を浴びた人を研究すべきだとの使命感があり、それ以外の被爆を軽視していた。未熟だった。今は異なる認識を持っている。

 ―なぜ考え方が変わったのですか。

 原爆養護ホームの園長を務めていた頃、原爆投下後に黒い雨が降った古田町(現西区)に住んでいた女性と出会った。当時29歳で、家は爆心地から4・1キロ。出産直後で動けず、約2週間は自宅周辺の野菜や水を摂取していた。

 女性は80代で肺や胃、大腸などに相次いでがんを患った。後に肺がんの組織を調べると、ウランが放出源とみられる放射線の痕跡を確認できた。内部被曝の確信を得た。

 ―黒い雨の実態に迫るには何が必要ですか。

 これまでは集団の傾向を調べる研究が強く、個別の症例はいわば「砂粒」のようなものだった。しかし今は医師として、臨床家の目線が大切だと感じる。被爆者のがんの増加にいち早く気付いた於保源作医師(92年に87歳で死去)は、日々の診療の中で抱いた違和感を調べ抜き、事実を明らかにした。まずは予断なしに体験者の言葉に耳を傾けなければならない。

 今回の検証が、黒い雨の体験者にとっては最後の機会となるだろう。2011年3月の東京電力福島第1原発事故の後、放射性物質が雨水だまりに集積したり、風に乗って遠方に飛んだりしていたことなど、新たな発見もあった。そうした知見も生かしながら、虚心に議論を尽くすべきだ。

 かまだ・ななお 広島大医学部卒。同大原爆放射能医学研究所(現原爆放射線医科学研究所)所長、放射線被曝者医療国際協力推進協議会(HICARE)会長などを歴任。広島原爆被爆者援護事業団理事長を2017年3月に退いた。専門は血液内科学。

【黒い雨、解明への道筋は】
<1>発生の仕組み きのこ雲から放射性物質降る
<2>新たな検証 五つの視点、課題は山積 国が検討会
<3>体験者の今 心身癒えぬ苦しみ 援護区域拡大へ闘い続く
<4>検討会委員の広島大名誉教授・鎌田医師に聞く

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