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【ヒロシマの空白】黒い雨、解明への道筋は<1>発生の仕組み きのこ雲から放射性物質降る

2021/1/2 23:19
原爆投下直後に撮影されたきのこ雲(米軍撮影、米国立公文書館所蔵、原爆資料館提供)

原爆投下直後に撮影されたきのこ雲(米軍撮影、米国立公文書館所蔵、原爆資料館提供)

 1945年8月6日、米国が投下した原爆が広島市上空で爆発した後、放射性物質を含む「黒い雨」が広い範囲に降り注いだ。そのこと自体はよく知られているが、被害の実態には未解明な点が多い。黒い雨の体験者を被爆者と認めた昨年7月の広島地裁判決を受け、国はあらためて降雨域などの検証に乗り出した。ただ、時間の壁は厚い。直接被爆だけではない原爆被害の「空白」は、なぜ今なお埋まらないのか。「空白」に苦しむ当事者の証言や科学的調査の歩みをたどる。(明知隼二)

 「もくもくと、裏返りながら上に伸びていくのを見上げとった」。廿日市市友田の土井完治さん(89)は、顔の前で両手の指を細かく動かし、広島方面の山上に立ち上ったきのこ雲の様子を言い表す言葉を探した。晴天の中、上空で横に流れた雲には稲妻が走り、現在の佐伯区方面に「黒い雨」が降る様子も見えたという。

 原爆によるきのこ雲は上空約1万6千メートルに達したとされる。大きく分けて雲の発生源は三つあり、それぞれから放射性物質を含む雨が降ったと考えられる。まず、爆発後の火の玉から生まれた雲だ。原爆は地上600メートルで爆発後、高熱の火球となり膨らみながら上昇。徐々に冷やされ、きのこの「かさ」の部分をつくる雲となった。

 一方、地上に届いた爆発の衝撃波は、土ぼこりや家屋の破片などを上空に巻き上げ、ちりによる雲を生んだ。さらに、爆心地からおおむね2キロ以内を全焼させた火災による雲も発生。きのこ雲の中〜下部を形作ったとみられている。

 きのこ雲には、多くの放射性物質が微粒子として含まれていた。原爆の原料ウランの分裂でできたセシウムなどの放射性物質、分裂しなかったウラン、放射能を帯びた土ぼこりやすすなどだ。

 こうした放射性微粒子は雨として広い範囲に降り注いだほか、乾いた微粒子のまま空気中に拡散したとみられる。雨や濡れた地面からの放射線だけではなく、飲み水や食べ物により放射性物質を体内に取り入れたことによる内部被曝の可能性が指摘されている。

【黒い雨、解明への道筋は】
<1>発生の仕組み きのこ雲から放射性物質降る
<2>新たな検証 五つの視点、課題は山積 国が検討会
<3>体験者の今 心身癒えぬ苦しみ 援護区域拡大へ闘い続く
<4>検討会委員の広島大名誉教授・鎌田医師に聞く

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  • きのこ雲と3層からなる黒い雨発生の仕組み

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