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首都圏に緊急宣言へ なぜ早く決断できない

2021/1/5 6:49

 遅きに失したと言わざるを得ない。

 政府は近く、新型コロナ特別措置法に基づく緊急事態宣言を首都圏に再発令する。菅義偉首相がきのうの年頭会見で明らかにした。期間は1カ月程度で調整するという。

 対象は東京都と神奈川、千葉、埼玉の3県。2日には4都県の知事が政府に宣言を出すよう求めていた。新規感染者が減らないどころか、東京都で昨年末に初めて4桁台に達するなど、医療現場は逼迫(ひっぱく)。危機感を訴える声は切実さを増していた。感染の広がりを食い止めるには、これまで以上に強い措置が必要なのは間違いあるまい。

 しかし菅政権は一貫して再発令には後ろ向きだった。経済への打撃を恐れているのではないか。4都県の知事と会談した西村康稔経済再生担当相が、特措法の改正を優先させる考えを示していたほどだ。

 確かに経済への配慮は必要である。それでも首都圏で医療崩壊が現実味を帯びつつある中、国民の生命や健康を守るため、何をすべきかは明らかだろう。

 もっと早く決断できたのではないか。「最優先の課題は新型コロナ対策だ」と菅氏は首相就任時の会見で述べていた。言葉通りの行動がなぜできないのか。医療や介護の現場の苦境を知る知事たちに比べ、危機感を欠いているとしか思えない。

 今回の緊急事態宣言は、昨年春とは様相が変わりそうだ。前回は飲食店や学校、文化イベント、スポーツも含めて活動を全面的に止めた。しかし今回は飲食店などに「限定的に、集中的に行う」という。会食など飲食の場で経路不明の感染が多く起きているとみているからだ。経済に与える影響を最小限にする狙いもあるのだろう。

 そのためにも、休業や営業時間短縮などの要請に応じてくれた事業者に対する十分な補償や支援は欠かせない。窓口となる自治体を、政府は財政面で支えなければならない。先手先手のきめ細かい対応が急がれる。

 というのも、菅政権では判断の遅れが相次いでいるからだ。例えば観光支援事業「Go To トラベル」の一時停止である。全国の新規感染者数が初めて2千人の大台を超えた昨年11月、見直しを求める声が知事や医師会などから上がっていた。しかし耳を貸さなかった。重い腰を上げたのは、事態がさらに深刻になってから。全国一斉で一時停止ができたのは、昨年12月28日だった。

 特措法の改正でも後手に回る。全国知事会が昨年春から要望していたのに、「感染が収束した後に課題を検証する」との立場をなかなか改めなかった。

 先月やっと改正案の検討に乗り出した。今月18日召集の通常国会で成立を目指すという。気になるのは、休業要請などに協力した事業者への給付金と罰則をセットにするという政府の考えだ。国民の自由と権利への制限は必要最小限でなければならず、慎重な議論が必要である。

 「場当たり的な判断の積み重ねだった」。政府のコロナ施策について、民間臨時調査会は昨秋、そんな報告書をまとめた。夏までの安倍政権への評価とはいえ、菅政権でも対応のまずさは変わらない。危機を乗り切るため、先を読んで柔軟に対応することが一層求められる。 

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