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句読点付きの2021年

2021/1/5 6:49

 石川啄木の没後に刊行された「悲しき玩具」には句読点付きの短歌が並ぶ。<何となく、今年はよい事あるごとし。元日の朝、晴れて風無し。>といったふうに。病気と借金苦のわが暮らしに、ひと区切り付けたい心情がこもるのか▲感染拡大にきっちりとピリオドを打つ―。この正月、そんな句点付きの初夢を見た人も多いことだろう。1都3県を対象に近く緊急事態宣言が発令されそう。昨年のように全国へ広がるのかどうか、首都圏以外の私たちも日々の行動が問われている▲今年3月11日、新型コロナのパンデミック、すなわち世界的大流行が宣言されて1年となる。このころまでに感染収束のめどを付けないと、夏の五輪どころではなくなりそう▲言うまでもなくその3・11は、東日本大震災から10年の節目でもある。命のはかなさにあらためて気付き、わが来し方行く末を見つめ直す。あの日は誰にとっても「人生の読点」だった▲新年に希望を託した啄木は<いつしかに正月も過ぎて、わが生活(くらし)が またもとの道にはまり来(きた)れり。>とも詠んでいる。取り戻すべき日常は誰にもあり、後戻りしてはならぬ道もまたある。いま一度、立ち止まる時かもしれない。 

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