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景気の行方 回復への道筋描けるか

2021/1/6 6:43

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。このまま感染が深刻化すれば、緩やかな回復軌道にあった景気が再び悪化しかねない。菅義偉政権が掲げる「感染防止と経済活動の両立」が真の正念場を迎えている。

 2020年はコロナ禍に揺さぶられた1年だった。行動制限で経済活動が大きく制約され、飲食や宿泊、交通をはじめ幅広い業種で業績が落ち込んだ。

 とりわけ20年4〜6月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は前期比の年率換算で3割近く減少し、戦後最悪の落ち込みとなった。その反動で7〜9月期には回復したが、通年では5%程度のマイナス成長になると推定されている。

 政府は21年度の経済成長率を4%増と見込んでいるが、楽観はできまい。コロナの感染状況に左右されるのは間違いない。

 本紙が中国地方の主要企業250社を対象に実施したアンケートでも、3割強が今年の景気見通しを「マイナス」と予測。コロナ前の水準まで回復する時期については、8割近くが「22年以降」とみている。

 景気の本格回復には、個人消費の持ち直しが欠かせない。コロナの感染拡大に歯止めがかかっていない現状では難しいとの見方が強いのも当然だろう。

 収束の鍵を握るワクチンは2月にも国内で接種が始まる予定だが、普及の見通しや効果はまだはっきりしていない。過度な期待は禁物だろう。

 最も懸念されるのは、国内外でコロナの感染拡大が収まらない状況だ。個人消費は一段と低迷し、企業の設備投資も抑制される。東京五輪・パラリンピックの開催も危うくなる。

 政府は7日にも、東京など1都3県に2回目の緊急事態宣言を発令する。地域経済や雇用への影響を最小限にするためにも、営業制限の要請などで苦境に立つ事業者へのきめ細かな財政支援は欠かせない。

 雇用情勢の悪化にも、きちんと対応したい。仕事を失った困窮者を支援する安全網の重要性は変わりない。

 短期的に見れば経済活動の制約は強まるが、今は医療体制が崩壊しないよう感染抑止に全力を注ぐ局面だろう。感染拡大を止めることが、結局は経済回復への最短ルートになる。

 日本経済の再生と地域経済の浮揚のためには、コロナ後を見据えた構造転換にも取り組まなければならない。

 菅首相は、デジタル化と温室効果ガスを減らす脱炭素化を看板政策に掲げる。追加経済対策で、洋上風力など脱炭素化につながる技術開発を支援する2兆円の基金や、地方自治体の情報システムの共通化に向けて数千億円の基金も創設する。

 そうした基金の狙いはうなずける点はあるが、その中身の議論は生煮えの感が否めない。補助対象など具体的な使い道を精査し、成長戦略に資する活用法の検討を急ぎたい。

 金融緩和に伴う大量の資金が流入し、日本や米国の株価が過熱気味に上昇している。実体経済とかけ離れたいびつさに危うさを感じる。

 コロナ禍に対する喫緊の対応はもちろんだが、安定した経済成長に向けてどう道筋を付けるのか。丁寧な分析に基づき、経済・財政運営の在り方を検証する必要がある。

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