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米議会へ暴徒乱入 トランプ氏の罪、明白だ

2021/1/9 6:45

 米国の民主主義にとって、恥辱にまみれた最悪の日として歴史に刻まれるに違いない。

 トランプ米大統領の支持者が、バイデン次期大統領を正式に認定する会議が行われていた連邦議会の議事堂に乱入し、実力行使で一時占拠した。

 バイデン氏の当選を認めない支持者らは議事を妨害しただけでなく、一部が暴徒化して警官隊と衝突。数人が死亡する流血の惨事になった。

 合衆国憲法が定めた民主的な政権の移行手続きを暴力で阻止しようとした前代未聞の出来事である。米国内外に与えた驚きと動揺は計り知れない。

 議会への乱入を扇動する形で引き金を引いたのは、あろうことかトランプ氏である。もはや大統領の資格はあるまい。その責任は明白で、厳しく問われなければならない。

 トランプ氏は首都ワシントンに集まって抵抗の意を示すよう支持者に呼び掛けていた。当日もホワイトハウス近くの集会で演説し、「弱腰では米国を取り戻せない」と大統領選の無効を訴えた。「議事堂まで歩こう。私も行く」とあおると、数千人の支持者が呼応した。

 トランプ氏は昨年11月の大統領選での敗北を受け入れず、証拠も示さず「不正投票」と吹聴し、支持者の怒りをたきつけてきた。それだけでも民主政治を否定するような振る舞いだろう。その上暴動をあおって選挙結果を覆そうとしたのなら、もはや「犯罪」と批判されても仕方あるまい。

 議事堂周辺の騒乱は、軍を出動させることでまもなく鎮圧された。再開した会議で、上院議長を務めるペンス副大統領は議場への襲撃を「暴挙」と強い口調で非難した。トランプ氏の要求もはねつけ、バイデン氏の当選認定を宣言した。

 騒乱から一夜明け、トランプ氏もツイッターに動画を投稿し、「新政権が20日に発足する。今は円滑で秩序だった政権移行に集中している」と述べ、バイデン氏の大統領選での勝利を事実上認めた。

 連邦議会を占拠した自身の支持者については「暴力や無法に憤っている。米民主主義を汚した」と非難した。閣僚や高官が辞任を相次ぎ表明し、民主党のみならず、身内の共和党議員からも責任を問い、解任を求める声が広がっている。

 強まる批判をかわしたい身勝手さも透けるが、約束通りに平和的な政権移行に協力することが最後の務めだと肝に銘じるべきだ。20日に迫るバイデン氏の大統領就任式が安全に実施できるよう、これ以上の混乱は許されない。

 共和党の牙城だったジョージア州で行われた上院2議席の決選投票では、民主党候補がいずれも勝利し、上下両院ともバイデン氏の陣営が多数派を確保することになった。

 新大統領に就くバイデン氏にとっては追い風になるが、強引な議会運営をすれば、新たな火種を生みかねない。人種や宗教、文化の対立、経済格差などが複雑に絡み合い、幾重にも分断された米国がまとまりを取り戻すのは至難の業だ。

 バイデン次期大統領には、二極化している市民間の溝を埋めながら、トランプ政権の4年間で深く傷ついた米国社会の修復に努めることが求められる。

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