コラム・連載・特集

座間事件とSNS 命守る仕組み築かねば

2021/1/10 6:44

 4年前、神奈川県座間市のアパートで若者9人の遺体が見つかった。「座間事件」である。会員制交流サイト(SNS)に自殺願望などを書き込んだ被害者たちを誘い込み、殺害した罪に問われた白石隆浩被告の死刑判決が5日確定した。

 東京地裁立川支部の判決は「犯罪史上まれにみる悪質な犯行」と非難を極めたものの、歯がゆく、むなしい思いも拭いきれない。どうして、理不尽にも命を奪ったのか。謎の十分な解明に至らず、遺族が望む「真の真実」には程遠い事件の幕切れとなったからである。

 9人の犠牲を無にしないためにも、せめて再発を許さぬ道を見いださねばなるまい。

 白石被告は2017年8月から約2カ月の間に、SNSのツイッターで誘い出した15歳から26歳の男女9人を次々と殺害して所持金を奪い、女性には性的暴行をし、遺体を損壊・遺棄した―と判決で認定された。

 むごたらしい所業に及んだ動機は金と性欲という。一部の殺害について後悔を口にしたものの、ほかの犠牲者には「正直、何も思わない」とした。遺族の胸中は察するに余りある。

 あぶり出せたのは、わなとしてSNSを悪用する手口だった。ツイッター上に悩みをつぶやく人に被告自身も自殺願望者のふりをして近づいていた。弱みに付け入ったのである。

 総務省情報通信政策研究所の調査(16年)によると、代表的なSNSのどれかを利用している割合が10代で81%、20代では97%に上る。夜昼なくつぶやくことができ、匿名のままでも交信できるSNSは若者にとって必須のメディアなのだ。胸底の叫びを吐き出せ、かりそめでも「仲間」意識を持てる頼みの綱でもあるのだろう。

 ただ、悩みの渦中では、相手の悪意に気付くまい。まずは予防策を講じる必要がある。

 事件後、ツイッター社は利用者からの報告で、自殺や自傷行為を助長するような投稿を禁じ、従わなければ締め出す措置を取っている。業界挙げて、加害者の予備軍を排除する努力を続けてもらいたい。

 警察もSNSを通じた交友関係に対応する態勢を強めているが、「通信の秘密」もあって情報入手には限界がある。緊急度に応じた情報開示の仕方を事業者は検討する必要があろう。

 さらに重要なのは、いざというとき、適切な支援に結び付ける危機介入の活動である。

 公的な相談・援助機関は、平日の日中だけの運用に限られるケースが多く、夜間や早朝にはとても対処できない。当事者である若者のニーズと食い違ってはいないだろうか。

 SNSを相談ツールとして生かす仕組みも考えるべきだろう。厚生労働省のサイトには、SNSのLINEやオンラインチャットなどでも連絡の取れるNPO法人の紹介がある。

 先の見えぬコロナ禍が続き、感染対策で対面がはばかられている。巣ごもり生活が長引くあまり、生きづらさや孤独感を抱えるケースが世代を問わず増えているかもしれない。

 身近な、あるいは周りの人々が、悩みやSOSを受け止める環境づくりが欠かせない。声をかけ、耳を傾け、支援者につなぐ。官民を挙げて、命を守る仕組みの構築が急がれる。

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

社説の最新記事
一覧