コロナ下の大学入試 受験生の不安、取り除け
大学入試センター試験の後継として初めて実施される大学入学共通テストが今週末から始まる。新型コロナウイルスの感染が急拡大する中で、受験シーズン本番を迎える。
共通テストは従来のセンター試験に比べ思考力や判断力、表現力の評価に重きを置く。出題の形式や内容が新しくなる初の試験だけに、対応に追われた受験生の不安はただでさえ大きかっただろう。
そこに直前になって東京や大阪、福岡など1都10府県に緊急事態宣言が再び出されるなど、コロナ禍の混乱が加わった。
国と各大学は感染対策の徹底はもちろんだが、不測の事態が起きても受験生が不利益を被ることのないよう対応しなければならない。
受験生も感染に注意しながら体調を整えて本番を迎え、積み上げた努力の成果を十分に発揮してほしい。
大学など過去最多の866校が共通テストを利用し、約53万5千人が出願している。
今年は16、17日の「第1日程」に加え、長期休校などで学習に遅れが出た現役生向けに30、31日の「第2日程」が設けられた。ただ第2日程で受けるのは700人余りにとどまり、大半が第1日程を選んでいる。
入試センターは、試験会場でのマスクの常時着用など感染防止策の徹底を求めている。防寒着の持参など例年とは違う点も多い。受験生は注意事項をしっかり確認しておく必要がある。
コロナへの感染が判明している場合は、症状の有無に関わらず回復するまで受験できない。一方で濃厚接触者と認定されても、PCR検査の結果が陰性であることなどを条件に別室で受験できる。
試験当日に体調が悪くなっても、追試験を受けるチャンスも設けられている。第1日程を受験できなかった人は第2日程を受ける。第2日程を欠席しても2月中旬に特例追試験がある。
試験当日や受験中でも発熱やせきなどの症状があるなど体調に異変を感じたら、ためらうことなく追試験に切り替えてほしい。自分の健康はもちろん、他の受験生への感染リスクに配慮した行動が求められる。
気掛かりなのは個別試験の動向だ。2月1日からは私立大の入試が本格化し、同25日から国公立大の2次試験が始まる。
予定通りに実施されるのが望ましいが、各地に試験会場がある共通テストと違い、全国各地から受験生が集まってくる大学も多い。その分、感染リスクは高まる。
感染がさらに拡大すれば、個別試験を中止し、共通テストの成績だけで合否判定をする大学も出てきそうだ。
大半の大学は試験が受けられなくなった受験生のため、日程の振り替えや追試を実施する方針を示している。各大学はできるだけ早く詳細を固め、受験生が戸惑うことのないよう必要な情報をきめ細かく発信することが欠かせない。
共通テストの導入に当たっては、国の制度設計の甘さから混乱が続いた。英語民間試験や記述式問題の導入が相次いで見送られ、受験生と教育現場は振り回されてきた。
国と各大学は、受験生が不安なく入試に臨めるよう、環境整備に万全を期す必要がある。
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