コラム・連載・特集

緊急事態、7府県追加 甘い見通し許されない

2021/1/15 6:01

 新型コロナウイルスの感染拡大にブレーキがかからない。政府は、特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象地域に7府県を追加した。エリア拡大に菅義偉首相は一貫して否定的だったが、関西圏、中部圏、福岡県を加えざるを得なくなった。

 それほど医療崩壊の危機感は増している。全国の感染者は3週間で10万人増え、累計で30万人を突破。重症者も900人を超え、過去最高を更新した。

 陽性と分かっても入院先や宿泊療養先が決まらない人も急増中だ。政府に助言する専門家組織によると、今月3〜9日で計6千人と前の週の倍になった。

 大阪府のまとめでは、一般病床に居たまま亡くなった人の数は、重症病床で亡くなった人の3倍。軽症でも安心できない。

 感染者の急増は医療体制全体も揺さぶっている。急病人らの搬送先がすぐ決まらないことが今月4〜10日、全国で2707件あった。1カ月前の倍。集計した総務省消防庁は、病床逼迫(ひっぱく)で通常の医療に十分対応できなくなっていると分析している。

 こうした状況を政府はどこまで把握しているのか。後手後手の対策しか打ち出せないのは、現状認識の甘さと危機感の乏しさの表れと言えよう。

 菅氏の会見でも認識不足がうかがえた。7府県追加の理由を「全国への感染拡大を防ぐためだ」と説明した。しかし感染は既に広がっている。新たな対策を講じても効果が出るまで約2週間かかる。状況が深刻になってからの対策では遅すぎる。

 乏しい危機感は、菅氏の率いる自民党にも共通する。党幹事長も務めた石破茂衆院議員(鳥取1区)が先週、大人数の会食に参加していた。これでは危機意識は国民には届くまい。ましてや行動を変えてもらうなど到底期待できない。

 前言撤回も目立つ。大阪府について、菅氏は飲食店の営業時間短縮効果により感染者が減ったとの認識を示すなど「優等生」扱いしてきた。宣言発令にも否定的だった。

 11カ国・地域とのビジネス往来も一時停止にするという。これまでは問題ないとしていたが、急に方針転換した。会食とりわけ夜の飲食を問題視してきたが、ここに来て日中も駄目だと強調し始めた。どれも、泥縄式に対策を小出しにしているとしか見えない。なぜ最初から他人との接触を徹底的に減らそうと、呼び掛けなかったのか。

 見通しが甘いどころか、先々を見ようともしていないようだ。民放の番組で先日、宣言の延長や拡大の可能性を問われ、「仮定のことは考えない」と答えていた。最悪の事態も含め、さまざまな想定をした上で、どんな場合にも対応できるようにしておく―。それが危機管理の基本ではないか。安易な楽観や決めつけを排し、万全な備えを心掛ける。そうしないと、この危機は乗り越えられまい。

 国民が納得できる説明をするには、科学的なデータや客観的な基準に沿った対策が欠かせない。菅氏は、根本からコロナ対策を考え直すべきである。

 中国地方も、首都圏や関西圏のような危機的状況に陥らないとは限らない。広島県は集中対策を来月7日まで再延長する。私たちも命や健康、地域の医療体制を守るため、危機感をさらに強めなければならない。 

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

社説の最新記事
一覧