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パーム油にひそむ闇

2021/1/15 6:01

 映画「大コメ騒動」のチラシをよく見る。大正のおかか(女房)にふんした井上真央さんが「役作りのため、おコメ断ちした」と舞台あいさつして沸かせたという▲中高年の記憶にあるのは、平成のコメ騒動か。冷害や台風で大凶作に陥り国は急きょタイなどから輸入した。慣れない長粒種は「パサパサしている」と不評だったものの、日本人の胃袋は落ち着く。ただし、農業史学者の藤原辰史(ふじはらたつし)さんによると、そのあおりで東南アジアでは「小さな飢え」が起きていたという▲日本は今も食料の輸入大国。肉や穀物だけではない。加工食品に欠かせない植物系のパーム油もそうだ▲米国は年の瀬に、マレーシア最大手の製造元を自国の市場から締め出した。原料のアブラヤシを採るために、熱帯雨林の不法伐採はおろか、子どもを働かせるなど人権侵害の疑いが濃いという。日本ではパーム油発電所の計画が相次ぐが、温暖化対策に逆行するとの批判も根強い▲誰かの飽食は、誰かの飢えと裏腹だろう。環境や人権に配慮した「持続可能なパーム油」なら納得できる。調達している日本の企業とて無関心ではいられまい。「パーム油断ち」を、一度私たちも試してみる手がある。

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