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決別 金権政治

住民協力「素人で十分」 車上運動員の法定報酬額「妥当」6割【決別 金権政治】<第4部・地方議員本社アンケートより>(中)

2021/1/16 23:20
選挙カーに乗り込み、車上運動員(右)とともに手を振る河井案里(2019年7月4日、広島市中区)

選挙カーに乗り込み、車上運動員(右)とともに手を振る河井案里(2019年7月4日、広島市中区)

 元法相の河井克行(57)、妻案里(47)の逮捕に至る一連の公選法違反事件の発端は、「車上運動員」の報酬を巡る疑惑だった。2019年7月の参院選広島選挙区で初当選した案里の陣営は法定上限の2倍の1日3万円を支払ったとされる。

 選挙カーから候補者名を連呼する車上運動員。違法報酬疑惑が発覚した当初から「法定額が低過ぎることが背景にある」との声が出ていたことを踏まえ、中国新聞社の地方議員アンケートでは報酬額の妥当性を尋ねた。62・2%が「妥当な額」と答えた。

 広島市議の太田憲二(58)も「妥当」と回答した。「地元の人に協力してもらい、人材確保に困ったことはない。むしろやりたいという人も多い。他のアルバイトの時給と比較しても低い額とは思わない」

 ▽「本音はプロで」

 呉市議の谷本誠一(64)は「車上運動員の報酬だけを引き上げれば、無償で電話作戦などに協力する運動員との間に差が広がり、運動員の士気に悪影響を及ぼしかねない」と説明。自身の市議選では日当1万円で、主に地元住民が協力する。「プロにこだわらなければ人材の確保に困ることはない。素人でも十分にうまくなる」と話す。

 一方で、「低過ぎるので引き上げるべきだ」との回答は27・6%あった。庄原市議の岡村信吉(76)は「プロと素人では全く違うし、集票にも影響してくる。本音ではプロにお願いしたいんだが…」と打ち明ける。

 庄原市は県内23市町で面積が最も広く、岡村は選挙カーでの遊説が必須と考える。「プロを雇うなら広島市や福山市などの都市部から来てもらうことになる。手間賃などを考えると1日3万円は必要」と話す。

 総務省によると、車上運動員に報酬を払えるようになったのは1978年で、日当の上限は4500円だった。83年に6千円、92年に現在の1万5千円に引き上げられ、その後は据え置かれたままとなっている。

 水面下では違法報酬が横行しているとの声もある。中国新聞の取材に対し、約20年前から県内の国政選挙と地方選挙で車上運動員を務めてきた女性は、平均で1日2万円弱を受け取ってきたと明かす。「業界では法定額以上の報酬が当たり前。違法という認識もない」と強調した。

 ▽車使わぬ候補も

 アンケートでは、車上運動員の活動に集票効果があるかも質問。「ある」「一定程度ある」が計62・9%に上った。理由としては「広く名前を知ってもらえる」「新人は特に有効」などと、知名度アップが見込めるとの意見が目立った。

 集票効果が「あまりない」「ない」と答えたのは計35・3%。「大音量で迷惑」「慣習でやっているだけ」との声が寄せられた。

 19年の東広島市議選で初当選した鈴木英士(33)は選挙期間中、騒音などへの配慮で選挙カーを使わなかった。ボランティアの学生と街を歩き、会員制交流サイト(SNS)で支持を広げた。「従来のやり方を全て否定するわけではないが、新旧織り交ぜたハイブリッドな選挙をしたい」。公費負担分を除く選挙費用は3万円弱だったという。(敬称・呼称略)

 <クリック>車上運動員の報酬 公選法は選挙運動員への報酬を原則禁止しているが、例外として車上運動員や事務員、手話通訳者には認めている。法定額を超えて払うと、3年以下の懲役または禁錮か50万円以下の罰金が科される。2019年夏の参院選広島選挙区で初当選した河井案里の陣営が車上運動員14人に上限の倍を払い、公設第2秘書の有罪判決が確定した。この捜査で検察当局が押収した資料などが端緒となり、同選挙区での大規模買収事件が発覚。案里と夫で元法相の克行が逮捕された。


【決別 金権政治】<第4部・地方議員本社アンケートより>
(上)「汚い選挙」大胆改革を 法改正が必要7割
(中)住民協力「素人で十分」 車上運動員の法定報酬額「妥当」6割
(下)無縁の町議、不満相次ぐ 「被買収者辞職を」6割

【広島県地方議員アンケート特集】
※次のページがあります(項目クリックで各ページへ)。
<1>選挙のカネ 6割以上が「金がかかる」
<2>国会議員との関係 交付金など受領「ない」9割
<3>当選祝い・陣中見舞い 多くが議員同士のやりとり「なし」
<4>法改正 政治資金規正法・公選法「ともに必要」5割
<5>買収事件の教訓 7割「議員の意識改革を」
<番外>国会議員アンケート

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  •  2019年夏の参院選で河井克行、案里夫妻が100人に計2901万円を配ったとされる買収事件では、選挙に絡んだお金のやり取りが浮き彫りとなりました。令和の時代も変わらない「金権選挙」。皆さんの地域でも耳にしたこと、目にしたことはありませんか。体験、情報、意見をぜひお寄せください。(中国新聞「決別 金権政治」取材班)

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