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26年という歳月

2021/1/17 6:44

 地震の受け止め方は年齢で大きく変わると、作家の高村薫さんは言う。大阪住まいで40代の時に阪神大震災、60代で大阪北部地震に見舞われた。若い頃には難なくできた片付けが年を取るとそうもいかない。今なら、へたり込んでしまうかもしれない、と▲きょう阪神大震災から26年。昨年暮れに出版された被災者証言集に高村さんがメッセージを寄せている。被災地で草の根支援を続けてきた神戸市のNPO法人「よろず相談室」の代表である牧秀一さんが編んだ1冊だ▲牧さんは、苦しむ被災者の伴走者として、聞き役に徹してきた。悲しみや苦しみの「声なき声」をすくい取ってきた。だが、訪問世帯は、四半世紀の間に十分の一の13世帯にまで減った▲今なお、前を向けず孤独感を強めている人も少なくあるまい。70歳の牧さんは近く一線を引く。過ぎゆく時間は、誰にも平等とはいえ非情でもある。高村さんはしかし、こうも書く。<繰り返し話を聞くだけの静かな時間は、それこそ被災地に足りていない「人間の時間」>だと▲26人の被災者が実名で振り返った証言集「希望を握りしめて」(能美舎)。504ページにも及ぶ大冊の重みに被災後の歳月が浮かぶ。

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