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決別 金権政治

無縁の町議、不満相次ぐ 「被買収者辞職を」6割 【決別 金権政治】<第4部・地方議員本社アンケートより>(下)

2021/1/17 22:57
熊野町内の事業所で執務する時光。事件を機に、町議会でも有権者の政治不信を感じるという

熊野町内の事業所で執務する時光。事件を機に、町議会でも有権者の政治不信を感じるという

 ▽有権者不信 県全域に波及

 「有権者に町議会まで不信の目で見られた」。広島県熊野町議の時光良造(61)は、県民の政治不信を招いた事件の影響をこう語る。

 2019年7月の参院選広島選挙区で起きた大規模買収事件。河井克行(57)=衆院広島3区=と妻の案里(47)=参院広島=は、同年春の統一地方選の前後に県内の地方議員らに「当選祝い」などと称して現金を配ったとされる。大半が自民党員だった。

 当時、県内では県議選など七つの議員選挙があり、熊野町議選もその一つだった。町議会には、河井夫妻から現金を受け取った議員はいなかったが、町民から疑いのまなざしを向けられ、時光は不愉快な思いもした。中国新聞社の地方議員アンケートには「被買収者の責任を徹底的に問うことで再発防止となる」と意見を記述。お金を受け取った議員に辞職を求める。

 ▽「小さな町だけ」

 起訴状などによると、河井夫妻が現金を渡したとされる被買収者100人のうち、県内の政治家は40人を占める。首長や安芸高田市議、北広島町議ら8人が次々と辞職した一方、それぞれ13人の「被買収議員」が属する県議会と広島市議会で辞職者はいない。

 熊野町と同様に「被買収議員」のいない議会からは、この現状に疑問の声が相次ぐ。神石高原町議は「有権者と距離が近い、小さな町の議員ばかり責任を取って辞めている。県議らもけじめをつけるべきだ」と指摘。3月に町議選を控えた海田町議も「政治への信頼が失われ、買収事件と無縁の町議には迷惑でしかない」と不満を口にする。

 地方議員アンケートでは、大規模買収事件を受けて必要な対応を複数回答で選んでもらった。トップの「国会議員、地方議員の意識の改革」(70・4%)に続き、「被買収者の辞職」(60・0%)が多かった。

 公選法上、罪に問われるはずの被買収者。その刑事処分をしていない検察当局の対応を問題視する議員も少なくない。アンケートの自由記述では「被買収者は必ず裁かれるべきだ。これを見逃せば、悪い根は広島の政界に残ってしまう」(三原市議)、「あしき前例となる」(安芸太田町議)などの意見が手書きでびっしりと書き込まれていた。

 ▽自民議連 回答0

 「政治とカネ」を巡る意識改革は、有権者にも向けられる。庄原市議は「昔から選挙のたびにお金が動いている。以前、別の議員が『有権者にお願いに行ったら、なんぼ持ってきたかと聞かれた』と話していた」と明かす。

 アンケートの回答率は8割を超え、地方議員の強い危機感と問題意識がうかがえた。ただ、議会別でみると、県議会の回答率は4割弱と群を抜いて低く、最大会派の自民議連(33人)に属する議員の回答はゼロだった。

 前代未聞の事件を教訓に、議会としての自浄作用を発揮し、金権体質を断ち切れるのか。政治家一人一人の自覚と行動が問われている。(敬称・呼称略)

 <クリック>参院選広島選挙区での大規模買収事件 検察当局によると、2019年7月の参院選で河井案里を当選させるため、夫の克行が同年3〜8月、地方議員や後援会員ら100人に計2901万円を渡し、うち5人は案里と共謀して計170万円を渡したとされる。同選挙区では、案里が自民党現職の溝手顕正と野党系の無所属現職森本真治に挑む構図で、森本と案里が当選し、溝手は落選した。

【決別 金権政治】<第4部・地方議員本社アンケートより>
(上)「汚い選挙」大胆改革を 法改正が必要7割
(中)住民協力「素人で十分」 車上運動員の法定報酬額「妥当」6割
(下)無縁の町議、不満相次ぐ 「被買収者辞職を」6割

【広島県地方議員アンケート特集】
※次のページがあります(項目クリックで各ページへ)。
<1>選挙のカネ 6割以上が「金がかかる」
<2>国会議員との関係 交付金など受領「ない」9割
<3>当選祝い・陣中見舞い 多くが議員同士のやりとり「なし」
<4>法改正 政治資金規正法・公選法「ともに必要」5割
<5>買収事件の教訓 7割「議員の意識改革を」
<番外>国会議員アンケート

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  •  2019年夏の参院選で河井克行、案里夫妻が100人に計2901万円を配ったとされる買収事件では、選挙に絡んだお金のやり取りが浮き彫りとなりました。令和の時代も変わらない「金権選挙」。皆さんの地域でも耳にしたこと、目にしたことはありませんか。体験、情報、意見をぜひお寄せください。(中国新聞「決別 金権政治」取材班)

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