コラム・連載・特集

コロナ禍と女性の苦境 さらなる支援が必要だ

2021/1/20 6:00

 長引く新型コロナウイルス禍で、立場の弱い女性たちが追い詰められている。

 各地に緊急事態宣言が出されるなど自粛生活は続き、家族が一緒に過ごす時間が増えている。感染防止対策で社会との接点も持ちにくい家庭は、死角になりがちだ。

 こうした状況下で、あらためて目を向けなくてはならないのが、ドメスティックバイオレンス(DV)の問題だろう。

 2020年度のDV相談件数が11月時点で既に13万件を超え、過去最多となったことが、内閣府の調査で分かった。全国の配偶者暴力相談支援センターなどに寄せられた相談を集計した。相談に至らず潜在化しているケースも多いと指摘される。

 経済活動の落ち込みによる雇用状況の悪化などで、生活に余裕がない家庭も少なくない。不安やいら立ちが暴力となって女性に向かっているのかもしれない。感染も防がねばならないが、暴力によって生命が危機にさらされる事態を、何とか食い止めなければならない。

 社会生活が崩れると、DVや虐待が増える傾向にあることは以前から指摘され、コロナ禍での増加が懸念されてきた。

 昨年4月には、国連機関や世界保健機関(WHO)などが警鐘を鳴らし、各国政府に対応を求めている。これまでもエボラ出血熱など感染症によって人の動きが制限されたときにDVが増加しているからだ。日本でも大きな災害の後に家族への暴力が多くなったことが明らかになっている。懸念は現実となっているといえよう。

 政府はこれまで、支援者たちからの要望を受け、民間支援団体と連携して電話相談窓口の24時間対応や全国共通短縮ダイヤルの設置のほか、会員制交流サイト(SNS)やメール経由での相談受け付けなどの体制拡充に取り組んできた。今後は相談体制にとどまらず、対策を急がねばなるまい。

 相談は支援の入り口にすぎないからだ。相談できたとしても、加害者から避難できなければ救われない。相談件数は増加している一方で、面談や支援につなぐDV相談員の数は十分とはいえない。市町村単位ではDV相談員を置いていないところも多いという。

 それだけに長年の経験があり、実情をよく知る民間団体との連携は欠かせないが、民間任せでは限界もある。財政面での下支えや、マンパワーの確保などで、政府には本気度を見せてほしい。シェルターなど安全な逃げ場の確保も求められる。

 DVを逃れた被害者の経済的困窮も問題である。女性は非正規雇用が多く、コロナ下で雇用の調整弁にされがちである。女性の就業者数の減少は、男性の2倍に上る。

 政府が設置した、有識者による「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」は昨年11月、橋本聖子男女共同参画担当相に緊急提言をした。提言では「女性への影響は深刻で『女性不況』の様相が確認される」と指摘する。女性の自殺者の数が昨夏から急増している点にも触れ、早急な対応を求めた。自治体や民間企業に協力を求めるべきだとの提言はもっともだ。

 住居の確保や就労への手助けなど生活全体を支える体制のさらなる拡充が求められる。 

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

社説の最新記事
一覧