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コロナ対策で刑事罰 強制より協力促す策を

2021/1/21 6:44

 政府はあす、新型コロナウイルス特別措置法と感染症法の改正案を閣議決定する。2月初旬には成立させる考えだ。

 歯止めのかからぬ感染拡大を食い止める狙いに異存はあるまい。早期改正は全国知事会が早くから要望していた。しかしスケジュール優先で、拙速な議論のまま成立させてはならない。

 というのも、私権の制限強化が目立つからだ。政府対応がずっと後手後手に回り、国民から信頼されていないからといって、強権的手法に頼るのは筋違いも甚だしい。

 看過できないのは、感染症法改正案への刑事罰導入である。感染者が入院を拒んだり感染経路をたどるための調査を拒否したりしたら刑事罰を科す。入院拒否は「1年以下の懲役か100万円以下の罰金」で、保健所の疫学調査を拒んだら「50万円以下の罰金」という。

 懲役まで必要なのか。生活のため働かざるを得ない人が検査を避けたり、感染を隠したりしかねない。結果的に感染防止に逆行することが懸念される。

 入院を拒んだ感染者がどれほどいたのか。保健所の聞き取りを拒否して調査にどんな支障があったのか。実際のデータを示して議論すべきである。

 菅義偉首相は先週の会見で調査拒否などの件数を問われても「たくさんあったという報告を受けた」と答えただけだった。これでは、なぜ刑事罰が必要なのか、国民を十分納得させることはできないだろう。

 改正案では、感染者の受け入れを医療機関に勧告できるよう知事や厚生労働相の権限を強化する。従わない場合は、病院名などを公表できるという。

 感染者の受け入れは、国公立の病院に集中しており、民間病院の受け入れを増やすのが狙いのようだ。ただ罰則を設けて強制するより、積極的に協力したいと思うよう環境を整える施策こそが求められる。

 特措法改正案に盛り込んだ「アメとムチ」にも疑問がある。緊急事態宣言に基づき、知事は休業や営業時間短縮を事業者に命令でき、応じた場合の財政支援を国や地方自治体に義務付けている。

 代わりに、拒否した事業者には行政罰の過料を科す。金額は緊急事態宣言下で50万円以下。また、知事による立ち入り検査を可能とする代わりに、拒否した場合も過料を科す、という。

 これで狙い通りの効果が上がるだろうか。なぜ事業者は休業や時短に応じられないのか、理由を調べて対策を練ることが近道ではないか。

 行政の裁量の余地が大きすぎることも問題だ。例えば緊急事態宣言の前段階として「まん延防止等重点措置」を設けるが、どういう場合が当てはまるか曖昧だ。罰則を科すのに、国会によるチェックや、不服申し立てといった救済手続きがないのもバランスを著しく欠く。改正案の抜本的見直しが急がれる。

 国民の自由と権利に踏み込むのであれば、憲法との整合性を慎重に見定めなければならない。政府の甘い見通しや判断の遅れのツケを押し付け、制限を強めることは許されない。

 政府はまず、今までの対策がなぜうまく行かなかったのかを分析し、改善を進めるべきだ。そうしてこそ、国民の幅広い協力を得る一歩になる。 

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