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案里被告に有罪判決 懲役1年4月、猶予5年 参院選公選法違反で東京地裁

2021/1/21 23:15
判決公判に出廷するため、東京地裁に入る案里被告(21日午後2時26分)

判決公判に出廷するため、東京地裁に入る案里被告(21日午後2時26分)

 ▽確定で議員失職

 2019年7月の参院選広島選挙区の大規模買収事件で公選法違反罪に問われた河井案里被告(47)=参院広島=の判決公判で21日、東京地裁の高橋康明裁判長は懲役1年4月、執行猶予5年、公民権停止5年(求刑懲役1年6月、公民権停止5年)を言い渡した。現金提供先とされる5人のうち、広島県議4人への買収罪の成立を認める一方、江田島市議への現金提供は無罪とした。判決が確定すれば案里被告は失職する。

 【動画】29歳で県議、政治家・案里被告の歩み

 高橋裁判長は「民主主義の根幹である選挙の公正を害する犯行。供与額は多額で刑事責任は重い」と指摘。案里被告陣営を仕切った元法相の夫克行被告(57)=衆院広島3区=との共謀も認定した。同じ裁判長が指揮する克行被告の公判に影響するとみられる。

 案里被告が渡したとされる現金の趣旨が最大の争点で、案里被告側は「19年春の県議選の当選祝いや陣中見舞いだった」などと無罪を主張。判決では案里被告が参院選前の19年3〜6月に奥原信也、岡崎哲夫、下原康充、平本徹の4県議と胡子雅信江田島市議の計5人に各10万〜50万円を渡した状況を個別に検討した。

 高橋裁判長は「案里被告は自民党県連の支援が得られず、厳しい選挙情勢だった」とした上で、県議4人については両被告の地盤以外を選挙区とし、選挙応援を期待できる関係にあった▽2人きりの状況で現金を提供した▽領収書を発行していない―などと指摘。「現金授受の時期、状況、金額などを総合して考えると、票の取りまとめの報酬として供与したと認められる」などと述べ、選挙買収と認定した。

 一方、克行被告が元公設秘書を介して胡子市議に提供した10万円は「案里被告の積極的な関与や強い影響は認められない」などと判断。無罪とした。

 判決を受け、東京地検は「主張が一部認められなかったことは遺憾。判決内容を十分検討し、上級庁とも協議の上、適切に対処したい」。案里被告は「一部の主張しか受け入れられておらず、その点では大変遺憾。判決内容を精査し、今後の対応を検討したい」とのコメントを発表した。

 判決によると、案里被告は克行被告と共謀し、参院選に当選する目的で県議4人に計160万円を渡した。控訴期限の2月4日までに控訴がなければ、判決は確定する。

 克行被告は、この4人を含む計100人に2901万円を配ったとされ、東京地裁で公判中。弁護人解任の影響で公判が一時中断し、判決言い渡しは春以降にずれ込む公算が大きい。

 【解説】時期・状況で買収と判断

 河井案里被告に対する21日の東京地裁判決は、「当選祝い」などの名目で現金を渡したとしても、授受の時期や状況、相手との関係性によっては買収罪になることを明確に示した。「政治とカネ」の問題が後を絶たない中、政治家の金銭のやりとりに司法が警告を発した形。金銭で票を買うことを禁じた公選法の趣旨に厳格に沿った判決と言える。

 広島県議4人に提供した計160万円について、案里被告は「県議選の当選祝いや陣中見舞いとして渡した」と主張したが、判決は(1)選挙の情勢(2)授受時期(3)2人の関係(4)授受の状況(5)金額―を個別に検討。厳しい状況で参院選に臨む案里被告が、各地に支持基盤を持つ県議に1対1の場で現金を渡した行為から「買収の意図があった」と結論付けた。

 案里被告の公判では、被買収側の県議から「3カ月以上前の金銭のやりとりは罪にならない『3カ月ルール』がある」との独自の解釈も聞かれた。夫の克行被告の公判を含めて、「買収」と感じる現金を受け取った政治家が、政治資金収支報告書に記載して「表の金」として合法と偽装するような行為が相次いで明らかになっている。

 専門家の間では、こうした法の抜け道やグレーゾーンをなくすための法改正を求める意見もある。水面下で続く金権政治から決別できるのか―。政治家に重い宿題が突きつけられている。(中川雅晴)

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