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案里被告に有罪判決 「金権」断ち切る契機に

2021/1/22 6:35

 2019年7月の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で公選法違反の罪に問われた参院議員の河井案里被告に、東京地裁は懲役1年4月、執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。

 検察が描いた全体の構図は、夫で元法相の衆院議員克行被告が選挙運動を仕切り、当選を得るため広島県内の県議や首長ら100人に計2900万円余りの現金を配ったというものだ。候補者本人だった案里被告はうち5人への170万円について共謀したとして起訴された。

 過去に例がないほど、大がかりなカネまみれ選挙が行われていたことに驚いた。法相経験者の起訴も、現職国会議員夫妻そろっての起訴も聞いたことがない。政治への信頼を深く傷つけた点で、夫妻の罪は既に重い。

 選挙は民主主義の根幹であり、公正さが保たれて初めて成り立つ。それを害する行為は厳しく罰せられなければならない。今回の判決を「金権政治」と決別する出発点にしなければならない。

 裁判は昨年8月に始まり、審理を迅速に進める「百日裁判」で行われていたが、克行被告が9月に弁護団を解任し、審理が中断したことを受けて二つの裁判に分離された。

 両被告とも現金の受け渡しについてはおおむね認めた。しかし、票の取りまとめを頼むなど買収の趣旨はなかったと真っ向から否定し、無罪を主張した。

 案里被告も被告人質問で「県議選の当選祝いや陣中見舞いであり、票をお金で買う発想自体がない」と反論した。しかし趣旨が地盤づくりであったとしても、これほど多額の現金を地方議員らにばらまく行為を正当化する言い訳にはできまい。

 案里被告から金を受け取った県議らは「参院選で応援してほしいのだと思った」「選挙違反の金だ」などと述べた。地裁はこうした受領側の証言を重視し、買収目的だったとの判断を示したのだろう。

 判決は、夫妻の共謀が成立することも認定した。克行被告の公判は現金を受け取った「被買収者」が100人と多く、判決言い渡しは春以降にずれ込む可能性が強いが、その判断に影響するのは間違いない。

 夫妻は逮捕から今日まで、国会議員としての職責を全く果たしていない。コロナ禍で苦境に陥る人々が増える中、現在も多額の歳費や手当が支給されていることに世論の批判は強い。

 地元の有権者や国民に対し説明責任を果たさないまま、法廷で争い続けていくことは、もはや誰の理解も得られまい。有罪が確定すれば、夫妻は失職するが、判決が出た以上、一刻も早く議員の職を辞するべきだ。

 公判を通じてカネにまみれた選挙の一端が明るみに出たが、その原因となった資金の流れの解明は進まなかった。

 参院選を前に自民党本部から夫妻側に1億5千万円もの政治活動費が提供されていたことが分かっている。うち1億2千万円は税金で賄う政党交付金だった。その一部が買収の原資になっていた疑念は残ったままだ。

 昨年の自民党総裁選の際、党の資金の流れの調査や再発防止について、菅義偉首相は「私が総裁になったら責任を持って対応したい」と述べた。総裁に就いてから4カ月余りたつ。いつ責任を果たすのか。

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