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米バイデン新政権 国際協調の乱れ修復を

2021/1/24 6:38

 米国の第46代大統領にジョー・バイデン氏が就任した。トランプ前大統領の支持者たちによる連邦議会議事堂の襲撃で、就任式は厳戒態勢となった。米社会が深刻な分断を抱える中、前途多難の船出である。

 就任演説でバイデン氏は「国民の結束を取り戻すことに全霊を注ぐ」「団結こそが前進の道だ」などと訴えた。

 融和を実現する使命は、国際社会でも同様に求められている。超大国として果たすべき役割はかつてなく大きい。

 バイデン氏は、「米国第一主義」を掲げた前政権が国際社会に入れた亀裂の修復を目指している。演説でも実際、「再び世界と関わり合う」「平和と進歩、安全保障のため、力強く信頼されるパートナーになる」といった言葉を重ねた。

 世界中の人々は、期待を持って耳を傾けたに違いない。猛威を振るう新型コロナウイルスや気候変動など地球規模の難題が立ちはだかり、国際的な連帯が欠かせないからだ。

 就任と同時に、前政権が離脱した地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」への復帰を国連に申請した。世界保健機関(WHO)に通告していた脱退手続きも停止している。

 外交では、とりわけ中国との関係が注目される。前政権下での対立は貿易から安全保障に及び、「新冷戦」とまで言われている。バイデン政権も、中国を「激化する競争相手」と位置づける。ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)にアジア政策を統括するポストを新設し、政権全体で取り組む姿勢を鮮明にした。

 バイデン氏には、前政権の全面的な敵対政策を修正し、対話の中で中国に行動変化を促す姿勢が求められる。

 被爆地としては、核を巡る対応にも注視したい。

 ロシアとの間に唯一残された核軍縮条約、新戦略兵器削減条約(新START)への対応が早速、試金石となる。来月5日の期限切れを前に、バイデン氏は、条約規定に基づいて最長5年間の延長を目指す新方針を示した。ロシア政府も「直ちに協議入りする用意がある」としており、手詰まり状態だった交渉が動きだしそうな気配だ。

 バイデン政権は早くも、北朝鮮の核・ミサイル開発について言及している。サキ大統領報道官が記者会見で「世界の平和と安全保障にとって深刻な脅威だ」と述べた。

 日本や韓国など同盟国と協議し、東アジア政策の「新たな戦略」をつくるという。北朝鮮から核の脅威を取り除くには、日米韓の連携が不可欠である。

 前政権が離脱したイラン核合意への復帰についても、欧州連合(EU)をはじめ、各国との連携が鍵となる。

 オバマ元大統領の下で副大統領を務めたバイデン氏は「核なき世界」の目標を継承する。その達成に力を尽くしてほしい。

 菅義偉首相は施政方針演説で、バイデン氏と早い時期に会って「日米の結束をさらに強固にします」と述べた。貿易などで中国とも歴史的に関わりの深い日本は、米中の間を取り持つ役割を果たしていくべきだ。

 感染症対策や環境分野での国際的なルールづくりでも、日本の積極的な働き掛けが求められるのは言うまでもない。

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