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「今日空晴レヌ」が待ち遠しい

2021/1/24 6:38

 これほど私蔵の作品ばかり集めた展覧会は覚えがない。JR三原駅前の三原市民ギャラリーで開催中の「生誕100年 内田皓夫(てるお)展」。民芸運動に連なる型染め作家が、いかに地元で親しまれていたか、しのばれる▲切り絵のような型紙を彫り、和紙や布を染めた作品の脇にマッチ箱や絵はがき、ブックカバーが並ぶ。どれも、ほのぼのとして飽きない。額入りや掛け軸にし、朝な夕な眺めて心を遊ばせれば、幸せなひとときだろう▲コロナ禍の憂さ晴らしに足を延ばしたせいか、太陽をあしらった小品の1行が心に染みた。〈今日空晴レヌ〉。内田さんの師で民芸運動の父、柳宗悦(むねよし)の断章らしい。胸のつかえも一緒に「さあ晴れた」と言える日は、いつになるのやら▲この世をはかなみ、先立つ人が増えているらしい。このところ右肩下がりだった警察庁の自殺統計が11年ぶりに前年を上回った。とりわけ女性と子どもの数が目立つ。何ともやるせない▲雨降りが続けば、誰もが青空を心待ちにする。しかし心の空、それも自分以外の心模様を気に掛ける人が少ないのはなぜ―。例の断章を柳自身は、そんなふうに解題している。忘れないよう、胸の画布に留めておく。

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