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3次補正予算案 喫緊の感染対策優先を

2021/1/26 6:37

 新型コロナウイルス対策費などを盛り込んだ2020年度第3次補正予算案の国会審議がきのう始まった。総額で19兆円を超え、経済対策などの財源となる。政府は年度末まで切れ目ない予算執行が必要として、月内の成立を目指しているという。

 しかし3次補正の編成に取りかかった昨年秋ごろは感染者は増えつつあったものの、まだ急増する状況には程遠かった。その後、爆発的に感染が拡大し、東京など11都府県に緊急事態宣言が出されるなどした。

 崩壊の危機にさらされている医療や、緊急宣言に伴い営業時間の短縮を求められた飲食業界などに待ったなしの支援策が求められている。にもかかわらず3次補正案には今の厳しい状況が織り込まれておらず、コロナ禍の収束を前提にした施策が多くを占めている。

 不要不急の項目を精査し、現状に合うよう柔軟に組み替えてもいいのではないか。国民の命と暮らしを守るため、優先すべき施策に限られた財源を集中させなければならない。

 補正予算案のうち感染防止対策には4兆3千億円余りを充てる。最も規模が大きいのはコロナ後を見据えた経済の再生・成長を促す分野で、11兆6千億円余りを計上した。防災・減災・国土強靱(きょうじん)化にも3兆1千億円余りが振り向けられている。

 立憲民主党など野党各党がとりわけ問題視しているのは、経済再生を図る観光需要喚起策の「Go To トラベル」を延長する事業費で、1兆円超を計上している。これを撤回するよう、予算案の組み替えを求めている。

 GoTo関連事業は少なくとも緊急宣言の期限である2月7日まで停止が決まっている。観光業などの経済的な救済策としては大きな効果があった一方で、移動を促す事業の実施が感染者の増加に影響した可能性も指摘されている。

 感染の広がりを抑え込んでいない現状を踏まえれば、慎重に事業の再開を判断したい。経済活動を促す施策よりも、今は医療や生活への支援に「公助」を集中させるときだという野党の訴えは理にかなっていよう。

 国土強靱化も大切だが、今回の補正予算に盛り込む必要があるのか、甚だ疑問だ。そもそも補正予算は特に緊急を要する経費のために編成してきたものだ。中長期のスパンで取り組む施策は本来、最初から本予算で手当てするのが道理だろう。

 ところが、菅義偉首相は予算の組み替えについて「十分な予算は確保している」と述べ、応じるつもりはないようだ。

 一度決めた方針に固執し続ける政権の姿勢が、昨年末のGoTo停止の判断の遅れを招き、結果的に感染拡大を防げなかった。轍(てつ)を踏まない施策の見直しが欠かせないのではないか。何より思い切った方針転換は政権として感染抑止に気概を示す明確なメッセージになるはずだ。

 経済構造の転換にも取り組まなければならないが、漫然と支出を続けていいわけではない。財政悪化を放置すれば、かえって経済に悪影響を及ぼす。

 予算の組み替えは異例であり、容易でない。コロナ危機を乗り越えるには幅広い国民の理解と協力が欠かせない。政権には予算修正などに臨機応変に対応する柔軟さが求められる。 

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