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さよなら「介護百人一首」

2021/1/27 6:40

 毒舌トークで知られる毒蝮(どくまむし)三太夫さんが、その矛先をNHKに向けている。本紙セレクトに「悩んでいる人がごまんといる今、やめるべき番組ではない」と。いつもなら細める目が三角になっていた▲番組当初から14年間ずっと司会を務めたEテレ「介護百人一首」のことだ。きょうの再放送で幕を引く。年によっては応募の短歌が1万首を超えた。えりすぐりの100首からは現場の喜怒哀楽がほうふつとしてくる▲〈「情けない」こぶし打ちつけ泣く夫(つま)の背中をさする黙ってさする〉〈気になりし寝息聞こうと近寄れば母の口ぐせ「生きとる生きとる」〉。三十一文字(みそひともじ)に収まりきらぬ思いは、今でも揺れていよう。〈進みゆく病魔に耐えるせつなさを短歌にすればすべて字余り〉▲予算と人手がかかるから番組を打ち切ったのだと、毒蝮さんは聞かされたらしい。費用対効果で測れぬ福祉の世界を見守ってきた番組にして…である。「新しいNHKらしさの追求」をかざす改革の先が思いやられる▲番組はともかく、介護は続く。疲れや孤立感から、心まで三角や四角にとがる日もあるだろう。少し離れて自分を見つめ、短歌に詠む時間で角が取れるといいのだけれど。

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