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脱炭素の取り組み 世界の動きに遅れるな

2021/2/1 6:39

 今度は実現できるだろうか。

 地球温暖化を防ぐため、二酸化炭素(CO2)排出に課金することで量を減らす政策である。石油や天然ガス、石炭といった全ての化石燃料の利用に対して環境負荷に応じた負担を求める炭素税や、企業の温室効果ガス排出に上限を定めて企業間で排出枠をやりとりする排出量取引などだ。「カーボンプライシング(CP)」と呼ばれている。

 その導入に向けて、環境省がきょうから、経済産業省は2月中旬から、それぞれ有識者会議を開いて議論を重ねていく。両省の大臣に連携して進めるよう菅義偉首相が指示していた。

 菅首相は昨年秋、2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにすると宣言した。30年度に13年度比で26%減という従来の目標を大胆に見直した。

 国連のグテレス事務総長にも高く評価されたものの、手放しでは褒められない。温暖化対策に積極的な欧州各国などに比べ、これまで大幅に後れを取っていたからだ。

 温室効果ガスの排出量2位の米国は、バイデン政権の誕生で前向き姿勢に転じた。国際的枠組み「パリ協定」復帰を決め、CPを米国全体に広げる考えだという。温暖化に伴う気候変動対策を外交と国家安全保障政策の柱に据え、国際社会を主導する意欲も表明している。

 排出量1位の中国も、60年までの実質ゼロを明言。再生エネルギー拡充に力を入れ、電力業界を対象にした全国レベルの排出量取引も運用し始めた。

 こうした世界の動きに取り残されてはならない。

 菅首相は、通常国会初日の施政方針演説で「環境対策は経済の制約ではなく、力強い成長を生み出す鍵となる」と強調した。言葉通り、取り組みを進めていくことが求められよう。

 しかし不安は残る。排出大幅削減の「切り札」と期待されるCP導入が必要だと環境省が一貫して唱えてきたが、経済界の反対などで腰砕けに終わってきたからだ。今回も対策に熱心な環境省と、経済界に近い経産省の二つで別々に議論せず、環境省に一本化して進めるべきだ。

 炭素税については、その一種の地球温暖化対策税(環境税)を導入しているから、不要との意見もあろう。しかし今の税率は低く、スイスやスウェーデンの5%以下にすぎない。

 経済成長に逆行するとの不安の声も聞こえてくる。しかしスウェーデンは1991年に炭素税を導入し、排出量を減らすとともに経済成長も成し遂げた。こうした例は他にもあるという。成長か温暖化対策か、必ずしも二者択一ではないのだ。

 産業界をどう説得するのか。政府の本気度が問われる。CP導入と引き換えに、国民の不安の消えない原発の新増設容認といった、安易な策に走るようなことは許されない。温暖化に歯止めをかければ、人類全体の利益になる。必要性を粘り強く訴えなければならない。

 脱炭素を巡る動きは今後も加速しそうだ。政策判断のミスや遅れは深刻な結果をもたらしかねない。かつて日本は太陽光発電の技術や生産能力が世界トップだったが、ドイツなどに抜かれた。政府の支援態勢が不十分だったとの指摘もある。轍(てつ)を踏まないよう、具体的な戦略と迅速な実行が求められる。

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