コラム・連載・特集

案里被告の議員辞職 金権政治決別の一歩に

2021/2/4 6:38

 政界を揺るがしてきた河井案里被告がついに参院議員を辞職した。一昨年7月の参院選広島選挙区を巡る公選法違反事件で一審東京地裁で有罪判決を言い渡されていた。

 民主主義の根幹である選挙を夫で元法相の克行被告とともに大規模買収で汚したとして追及されてきた。控訴期限のきょう控訴しなければ有罪が確定し、当選無効となるはずだった。判決は不服らしいが、辞職するのは有罪を認めるということだろう。しかしこれでは済まない。

 保釈後、判決後ともに案里被告は記者会見せず、一切説明していないからだ。

 公認候補として擁立した自民党も説明責任を果たさず、安倍晋三前首相や現在の菅義偉首相は「捜査中」「公判中」などと理由をつけて、これまで言及を避けてきた。

 だが、巨費を提供して当選させた人物に、離党したものの公選法違反で有罪判決が出たのである。国民の政治不信を深めたのは間違いない。金権政治を許さない決意ならば、党総裁として説明から逃げてはなるまい。

 迷惑を掛けてすみません―。きのう案里被告は自民党幹部らに電話でそう謝罪したという。

 「買収の意図はない」などと主張してきたが、控訴断念によって大がかりなカネまみれ選挙だったことが確定する。

 判決は夫婦の共謀を認定し、克行被告が事件を主導した構図を指摘している。克行被告の裁判はまだ続いてはいるものの、罪を認めて潔く辞職すべきだ。

 案里被告の選挙戦を後押しするため、当時の安倍首相や菅官房長官が広島を訪れて、街頭で演説している。さらに自民党本部は1億5千万円もの巨額資金を陣営に提供している。うち1億2千万円は政党交付金、つまり税金である。その一部が買収に使われた疑念もある。

 その使途の解明について、菅首相は昨秋の党総裁選で「総裁になったら責任を持って対応したい」と語った。ところが首相になるや、消極姿勢を取る。有罪判決が出て、与党内で案里被告の議員辞職を求める声が強まっても、「出処進退は自ら判断するべきだ」とはぐらかした。国民の政治不信を払拭(ふっしょく)する気はないのだろうか。

 やはり税金から、案里被告には多額の歳費や手当が支払われてきた。買収によって当選したにもかかわらずである。昨年6月の逮捕後だけで2100万円以上に上る。コロナ対策の議論など重要な仕事が議員に負託されていたのに、10月の保釈後は国会に一度も出席していない。不正を働き、職務も果たさない議員には歳費などを返還させる仕組みや法整備が必要だ。

 一方、河井夫妻側から現金を受け取っていた地元の政治家の責任も問わねばならない。検察は立件を検討すべきだ。

 「県民として恥ずかしい」。地元でよく聞かれる声である。全国から厳しい目が注がれてきた。広島県の政界には、金権選挙の体質や土壌がはびこっていたのが現実だろう。この機に、あしき慣習を一掃することが求められる。

 4月25日の参院広島選挙区補選へ向け、与野党とも候補者選びに入ったようだ。金権政治を絶てるか。選挙戦の行方とともに私たち有権者の意識が問われ、注目される。

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

社説の最新記事
一覧