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新型コロナ関連法 恣意的運用許されない

2021/2/5 6:38

 新型コロナウイルス対応の改正特別措置法と改正感染症法が、わずか4日の審議で成立した。営業時間短縮の命令に従わない事業者や入院措置に応じない人に罰則を科す。私権を制限するだけに時間をかけて議論を尽くすべきだった。結局、生煮えで多くの懸念が残された。

 感染の急拡大で、政府は先月緊急事態宣言を再発令した。しかし十分に抑え込むことができず、10都府県ではさらに1カ月の延長が決まった。罰則を盛り込んだ関連法で、手詰まりを打破したいのだろう。しかし実効性に疑問が残る。

 その一つが、入院拒否や疫学調査への協力拒否などに対する罰則の導入である。人権に関わる問題にもかかわらず、導入の根拠が不明だ。これまで入院拒否が何件あり、そのためにどの程度感染が広がったのかなどについて何も示されていない。

 国会で問われた田村憲久厚生労働相は、新型コロナ感染者が入院勧告に従わなかった事例を77の地方自治体で確認したと報告した。疫学調査に応じなかったケースも107の自治体で報告されたと述べた。しかし実数や拒否の理由の説明はなかった。それを検証しないまま、罰則で国民を脅すような方法では感染拡大を抑えられまい。

 罰則導入に伴う保健所の混乱も心配だ。入院を拒んだ人に罰金を科す場合、調査を担う保健所の負担がさらに増す。それでなくても現場は、長いコロナとの闘いを強いられている。

 改正案にあった懲役などの刑事罰こそ削除されたものの、罰則によって感染者差別やバッシングが過激化したり、感染を隠す人が出たりする恐れがある。

 新設された「まん延防止等重点措置」も全体像が見えない。緊急事態宣言に至る前段階で、都道府県知事が、繁華街や市町村単位のピンポイントで事業者に営業時間の変更などを要請できる。「正当な理由」なく応じない場合には、命令できることになった。

 では「正当な理由」とは何なのか。国会審議では明らかにならなかった。恣意(しい)的に運用されないか心配だ。

 そもそも、緊急事態宣言に至る前の段階を設ける必要があるのだろうか。市中感染が広がっている中で、ピンポイントでの措置に効果があるのか。さまざまな疑問が浮かぶ。

 違反者の公表や摘発など実際の運用を担う自治体が違反者をどうチェックするのかも見えてこない。自治体が時短営業要請をした飲食店などが、従っているかどうかを、職員が毎日全店舗見回ることは不可能だろう。

 罰則を振りかざす前に、政府にはすべきことがたくさんある。病床が足りず、入院したくてもできない患者がいる。自宅で待機中に亡くなる感染者もいる。そうした実態を改善せず、なぜ逆に入院を強制するような法改正を優先させたのか。菅義偉首相は説明すべきだ。

 菅首相が「罰則とセット」と強調していた事業者への財政支援も心もとない。額や対象は示さず、「経営への影響の度合い等を勘案」というあいまいな表現にとどまった。事業者は納得できないのではないか。

 憲法が保障する自由を制約することになる以上、政府は明確な運用基準や事業者への支援策を示すべきである。 

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