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首相長男の官僚接待 政権の体質こそ問題だ

2021/2/8 6:51

 政治とカネの問題や時の政権に対する官僚の忖度(そんたく)が後を絶たず、国民の政治不信は強まるばかりだ。今度は総務省幹部4人が昨年10月から12月にかけ、菅義偉首相の長男らから高額接待を受けていた問題が発覚した。

 首相の長男は、番組制作や衛星放送などの会社「東北新社」に勤めている。その子会社は、放送行政を所管する総務省から衛星基幹放送事業者の認定を受けている。長男は子会社の取締役でもあり、まさに「利害関係者」と言えよう。

 利害関係者からの接待や金品の贈与は、国家公務員倫理規程で禁止されている。幹部4人は違反している疑いが濃厚だ。行政の公平性に対する信頼を揺るがす重大な問題である。

 総務省が中心になって調べているが、身内の調査で、どこまで実態を明らかにできるのか。お手盛りで済ませては不信感は拭えない。弁護士など第三者を交えて徹底的に解明すべきだ。

 この問題は週刊文春の報道で発覚した。幹部4人はそれぞれ料亭やすし店などで接待され、手土産やタクシーチケットも受け取っていた。首相の長男は全ての会食に参加したという。

 幹部の1人、秋本芳徳・情報流通行政局長は昨年12月、長男側の誘いに応じて費用を払わず会食した事実を国会で認めた。長男と、子会社の社長に接待された。にもかかわらず「利害関係者に当たらないと認識していた」。お金は後で支払ったという。昨年12月はちょうど衛星放送の更新時期だったとも指摘されている。

 この説明では到底納得できない。利害関係者だと本当に気が付かなかったのか。誰に接待を受けるか、きちんと調べなかったのか。首相の長男の誘いだから断りづらかったのか。接待を受けたのはこの時だけか…。疑問は次々に浮かんでくる。

 放送や郵便、携帯電話をはじめとする通信事業など、総務省が許認可などの権限を持つ分野は少なくない。そうした利害関係者との付き合いには、細心の注意が求められる。それだけにモラルのなさは信じられない。1人1万円超の会食の場合は、事前の届け出が必要だが、誰も届け出ていなかったという。

 菅首相の対応もあきれるほかない。当事者とも言えるのに国会答弁はまるで人ごとのようだ。確かに「長男は完全に別人格」という弁解はその通りである。しかし首相の威光を当てにしたり見返りを求めたりして長男に近付いてくる人はいるはずだ。自らの持つ権限や権力に対して、菅氏は無自覚すぎよう。

 しかも菅氏は、自らが総務相になった2006〜07年、長男を公職である大臣秘書官にしていた。顔色をうかがう人が省内にいても不思議ではない。

 安倍前政権の時に発覚した森友、加計学園や「桜を見る会」の問題と根っこは同じだろう。身内や仲間、支持者を特別扱いする「政治の私物化」体質である。感化されたのか、官僚も国民ではなく、官邸ばかり見て仕事をするようになってしまい、ついには公文書の改ざんまで起きた。官房長官として支えた菅氏の責任も重い。

 そうした体質を引き継いだことこそ問題だ。国民の信頼を取り戻すため、抜本的に改める必要がある。菅氏は、その先頭に立たなければならない。

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