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サンゴ礁の崖は高層マンション

2021/2/8 6:51

 かつて日本列島のあちこちに「潟」があったという。砂州で外海と仕切られた浅い水域。海でも陸でもない「あわい」。新潟のように地名に往時をしのぶ例もある。ウナギやカモを捕ってよし、養分を含む堆積土を肥料にしてよし▲南の海なら、サンゴ礁に囲まれた「ラグーン」を指す。ラグーンは天然の防波堤だったり、身の丈に合った漁場だったり。今はコロナで小休止だろうが、世界中からダイバーが集う観光資源でもある。年間の純利益は1兆円を超すというから大きい▲だが、サンゴ礁は気候変動によって今世紀中に全て消滅する恐れがある。国連環境計画が衝撃的な予測をまとめた▲確かに近年「白化」と呼ばれるサンゴの瀕死(ひんし)状態が案じられる。水温の上昇で共生する褐虫藻(かっちゅうそう)が追い出され、養分や酸素を取り込めなくなるためだ。日本近海では3年後、常に白化が起きている状態になるという。「カーボンゼロ」は待ったなしだ▲旅行作家兼高かおるさんは「珊瑚(さんご)礁の崖はまるで魚たちの高層マンション」と自ら潜った海中の景を表した。それは生物多様性の揺り籠と言ってもいい。恩恵を受けている人類も10億人以上。「あわい」の大切さをつくづく思う。

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