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接触アプリの不具合 政府の本気度疑われる

2021/2/9 6:45

 新型コロナウイルス対策でスマートフォンに取り入れるよう、政府が国民に活用を勧めてきた接触確認アプリ「COCOA(ココア)」が昨年9月から4カ月にわたり、不具合なまま放置されていた。

 厚生労働省が昨年6月に運用を始めたアプリである。陽性と判定された利用者が登録すると、過去2週間以内に1メートル以内で15分以上、接触した別のアプリ利用者に通知が届く仕組みのはずだった。その通知機能が、利用者の約3割には働いていなかったという。

 非常時だというのに、緊張感を欠いた失態である。感染封じ込めに対する政府の本気度が疑われるのも無理はない。

 既にダウンロードされた2500万件近くのうち、不具合が見つかったのは約770万件のアンドロイド版だ。重症化リスクの高いシニア世代もよく使っている基本ソフトだけに、信頼失墜の罪は重い。

 厚労省の説明では、委託業者が昨年9月にアプリを改修した際、障害が生じた。うまく直ったかどうか、端末で試すことも怠っていたという。

 責めを負うべきなのは、業者に任せきりにした厚労省の姿勢にとどまらない。そもそも開発当初のアプリには不具合が付き物なのに、なぜ4カ月間も捨て置かれていたのだろう。

 「接触家族や知人が感染したのに通知が届かない」といった疑問や苦情の声は、すでに昨年から報道や会員制交流サイト(SNS)で上がっていた。本年度だけで約2億5千万円もの公費を投じる事業の割に、対応の感度があまりに鈍い。

 これでは、接触確認アプリの普及が伸び悩んでいるのも仕方あるまい。

 普及率の数値目標を厚労省はいまだに示さないが、海外の研究者によれば、十分な効果を得るには少なくとも人口の60%前後が望まれるという。国内では、まだ20%にも満たない。また、肝心なコロナ陽性者の登録にいたっては、わずか約2%にとどまる。いつ、どこで、誰と接触したか、国にも分からぬようプライバシーに配慮したにもかかわらず、である。

 信頼感なくして、人は動くまい。アプリの利用でも同じだろう。低迷する普及率や陽性者登録の数字は、むしろコロナ対策に対する信頼度と、政権は受け止めるべきだろう。

 一連の対応について、菅義偉首相が「お粗末」と認めたのは当然として、厚労省には根深い病根が巣くっていると疑った方がいいのではないか。

 というのも、コロナ関連行政のお粗末ぶりは今回に始まったことではないからだ。陽性者の報告を当初はファクスで保健所や医療機関から求めていたり、雇用調整助成金のオンライン申請が滞ったりと目に余る。

 今回のアプリ導入でさえ、この始末である。国民全てに対するコロナワクチンの集団接種という、前例なき難事業を任せるには不安が拭えない。国民全員分の数量の確保を今年前半までに、とのハードルは高い。

 ワクチンには国民の命と健康が懸かる。流通と接種にスピードと公平性の両立が求められ、体制整備は言うほど簡単なものではあるまい。「国民のために働く内閣」を金看板にする菅政権の正念場である。 

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