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広島県・市の予算案 コロナの「先」も着実に

2021/2/11 6:39

 新型コロナウイルスの感染防止策は当面、最も重要だろう。しかしコロナ後を見据えた対応を忘れるわけにはいかない。中国地方の各自治体で本格化している新年度当初予算案には、そうした苦労がうかがえる。

 きのう出そろった広島県と広島市の予算案にも、そんな配慮がにじんでいる。新年度はちょうど、2030年度を目標とした県・市それぞれの長期ビジョンの実質的な初年度。コロナ収束の「先」の地域づくりや、人材育成にどう取り組むか。予算案を通じて、目指す将来像を明らかにすることが求められる。

 県は昨年秋、県政運営の指針となる、21〜30年度を対象にした総合計画を策定した。デジタル技術の活用や、ひろしまブランド強化、人材育成の推進の三つを柱としている。

 一方の市も昨年夏、「国際平和文化都市」を引き続き目指すとする基本構想を改定した。その実現に向けた第6次基本計画では、30年度までを視野に、「平和」「活力」「豊かな人間性を育む」の三つの分野別に施策の方向性を打ち出した。

 しかしコロナ禍が立ちふさがった。私たちの暮らしだけではなく、予算案にも影を落としている。とりわけ県税収入は本年度当初より8%、271億円も落ち込む見通しだ。県は「貯金」に当たる基金の一つの全額取り崩しに追い込まれた。リーマン・ショックの時をも上回る異例の事態と言えよう。

 苦境の中、県・市とも、それぞれの計画に沿った施策を予算案に盛り込んだ。県は妊娠から出産、子育てにかかわる世帯を一貫して支える「ネウボラ」の拡充や、叡啓大の開学といった人材育成などである。

 市では、サッカースタジアムの新設や、旧市民球場跡地イベント広場の整備、JR広島駅南口広場の再整備など巨額の事業が目立つ。

 将来への先行投資が不可欠なのは確かだろう。しかしコロナ後の社会がどうなるか、今のところ見通せない。人口減少に転じた区もあり、全市的な目配りが欠かせない。各事業の採算や市の財政規律を常に考え、柔軟に進めることが必要である。

 平和発信には、県・市とも力を入れている。被爆地として評価できる。市は、平和文化月間と位置付ける11月に若者による平和の誓いなどのイベントを開催。8月に延期された核拡散防止条約(NPT)の再検討会議や、年末にも開かれる核兵器禁止条約の締約国による初の会議に平和首長会議の会長でもある市長が参加する方針だ。

 県は別途、核抑止力に代わる新たな安全保障政策づくりの推進や、その政策を再検討会議や締約国会議で働き掛けることなどを検討している。

 今年は禁止条約が発効し、廃絶に向けた「元年」となる。被爆地の責務は重みを増すだけに県・市の連携と役割分担が欠かせない。一体で取り組んでこそ国際社会への影響力は強まる。併せて、最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」の保存・活用策を具体化することが急がれる。

 連携が必要なのは平和発信に限らない。感染防止策はもちろん、収束後の街づくりでも、互いに協力しなければならない。コロナ禍に加え、少子高齢化による人口減少、財政難など課題を乗り切るためでもある。 

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