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「アテレコ」のレジェンド逝く

2021/2/11 6:39

 よれよれコートで風采の上がらないコロンボに対し、コジャックは高級スーツ、時には毛皮のコートもまとう。70年代に人気を得た米国発の二つの刑事ドラマは両方とも、翻訳家の額田やえ子さんがせりふを和訳した▲似たフレーズでも主人公の性格によって微妙に訳を変えたそうだ。犯人を追い詰めたコロンボがやんわりと「あ、そのまま」なら、コジャックは「待て」と一喝。相手が何かを隠し持っていそうだと「ちょっと拝見」か「見せてみな」というふうに▲ニヒルな低音で、そのコジャックの声を吹き替えた森山周一郎さんが86歳で旅立った。今ごろは天国で、コロンボの声がはまり役だった小池朝雄さんと再会を果たし、ドラマ談義で大いに盛り上がっていることだろう▲演じた米国の俳優テリー・サバラスさんに成り切るため、森山さんは頭をそり上げて収録に臨んだという。その心意気はハリウッドまで伝わり、後に対談が実現した際には「僕を日本で有名にしてくれてありがとう」▲やや早口、べらんめえ調で―。苦吟した額田さんに負けじと、森山さんも声色に細心の工夫を凝らした。作家の曽野綾子さんをして「アテレコは芸術」と言わしめたそうだ。

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