たかが茶髪、されど茶髪
2021/2/17 6:40
20年近く前、カンボジアの農村地帯にある小学校を訪ねると、子どもたちがとびきりの笑顔で迎えてくれた。茶髪が目立つ。「おしゃれだな」とつぶやくと、現地の教師は首を振った。「栄養失調で髪の色が抜けるんです」。わが不明を思い切り恥じた▲生まれつき茶髪なのに、校則を盾に、教師から何度も黒染めを強要されて不登校になった―。そんな元女子高生の訴えを一部認め、大阪地裁は府に賠償を命じた。ただ、頭髪の染色を禁じた校則は違法ではないとした▲さて、この司法判断を世間はどう受け止めるだろう。わが国では栄養失調による茶髪はまれだとしても、貧困ゆえに髪を染めたくてもかなわない子もいるだろう。コロナ禍により、貧富の格差はいっそう広がっている▲一方、厳格な校則を押しつければ非行は防げるという時代でもないだろう。元首相による女性蔑視発言の直後でもある。やっぱり人権尊重に疎い国なのかと、海外にも反響は広がりそう▲あのカンボジアの子たちは黒髪を取り戻しただろうか。今では思い思いの色に染めているだろうか。個性や多様性を尊重しつつ、公平で公正な社会を築く。たかが髪の色だが、考えることは多い。
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