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株価3万円台 反落リスク警戒怠るな

2021/2/18 6:44

 東京株式市場で、日経平均株価が30年半ぶりに3万円の大台を回復した。

 長期化する新型コロナウイルス禍の影響で、景気は落ち込んだままだ。足元の経済が厳しさを増す中、急ピッチで上昇してきた今の株高は、実体経済と著しく乖離(かいり)していると言わざるを得ない。

 市場関係者からは「バブルの再来」と指摘する声も上がる。株価が急騰すればするほど、その分反落するリスクも膨らむ。過熱気味の市場の先行きは危うさをはらんでいる。金融当局は警戒を怠ってはなるまい。

 2020年10〜12月期の国内総生産(GDP)速報値が大方の予想を上回る大幅なプラス成長となり、買い材料のきっかけになったようだ。

 世界的に需要が急回復している自動車メーカーやIT関連企業などで業績予想の上方修正が目立つのも押し上げの要因になったのだろう。大規模な経済対策の効果や、コロナ収束後の経済回復への期待感も後押ししたとみられる。

 しかしGDPの水準はまだ低く、20年通年では11年ぶりのマイナス成長に陥った。今年1〜3月期は、緊急事態宣言の再発令を受けてマイナス成長が避けられない情勢で、さらなる悪化も懸念される。

 それでも30年半ぶりの高値にたどり着いた背景には、世界的な金融緩和と財政出動に伴うカネ余りがある。あふれ出した余剰資金が低金利の続く中で運用先を探しあぐね、株式市場に流れ込んでいる。

 株価の上昇は景気の先行きへの見通しを明るくし、実体経済にはプラスだ。本来は望ましく、決して悪いことではない。

 問題は、経済の動きや企業業績と連動せずに、株式を買い求める余剰資金が相場を支えている構造にある。東京市場では、日本銀行による上場投資信託(ETF)の大量買い入れが、健全な相場形成を阻害しているとの指摘は根強い。

 昨年3月には、新型コロナの感染拡大による株価急落を受けて、新規購入枠を年12兆円に倍増させる異例の対応に踏み切った。市場には「株価が下がれば、日銀が買い支えてくれる」といういびつな投資家心理が広がっているのではないか。

 皮肉にも新型コロナ対策が今の株高を支え、バブルとも呼ばれる状況をつくり出している。コロナ禍の行方はまだ見通せていない。政府を含めた金融当局には実体経済を下支えしながら金融市場が混乱しないよう慎重なかじ取りが求められる。

 日銀はさらに市場への関与の仕方が適切かどうかを見極め、異次元金融緩和の出口戦略も検討しておく必要がある。

 株高による格差の拡大も見逃せない。株を多く持つ富裕層はますます資産を増やし、豊かになる。日々の暮らしに不安を抱える人々には恩恵は届かず、さらに苦境に追い込まれている。

 地域経済をみても、飲食や宿泊などサービス業を中心にコロナ禍の打撃が深刻さを増す。経営難に追い込まれている中小事業者や個人事業主も多いのではないか。

 二極化による社会の分断を深刻化させてはならない。政府は感染収束に全力を挙げるとともに、中小事業者や生活困窮者への支援に手を尽くすべきだ。 

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