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春待つ気分

2021/2/18 6:44

 行きつけの店で「本日のランチ」の案内板に、春野菜の天ぷら定食を見つけた。出てきた皿には揚げたてのフキノトウやタラの芽が載っている。一足早く、舌の上に春がやってきた。蕗(ふき)の薹(とう)見つけし今日はこれでよし(細見綾子)▲高知に住む友はフキノトウを裏山で籠いっぱいに摘み、SNS上の写真でお裾分けしていた。山口の知人からは渓流釣りの解禁を待ちわび、さお振りの練習にいそしんでいる近況が届いた。春の足音を分かち合う楽しみは、コロナ下でも変わらない▲今日は二十四節気の「雨水」。雪が解け始め、草木が芽生える頃で、農耕の支度に入る目安とされてきた。きのう中国路に雪風が吹き付けた通り、三寒四温を繰り返しつつ冬を見送る▲芽吹きの色を挙げれば、蓬(よもぎ)色に萌黄(もえぎ)色、若菜色あたりだろうか。「春告(はるつげ)鳥」の鶯(うぐいす)色もある。万葉の時代から四季の花鳥にも見立てられた色は、和歌に詠まれ、衣に染めてまとわれてきた▲いにしえの色彩を追い求めた京都の染織家、故吉岡幸雄(さちお)さんに聞いた言葉を思い出す。「人間が色を求めるのは、自然の移ろいを身近に引き寄せたいからです」。春本番は遠くない。柳色、桜色、若竹色とにぎやかになる。

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