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黒染め強要、賠償判決 人権守る議論広げよう

2021/2/21 6:45

 大阪府立高に通っていた元生徒が、生まれつき茶色い髪を黒く染めるよう教諭らに無理強いされ不登校になったとして、損害賠償を求めた訴訟の判決が下った。大阪地裁は、元生徒が不登校になった後の学校の対応に問題があったとして府に賠償を命じたものの、頭髪指導については「違法とは言えない」との判断を示した。

 学校の定める校則に明確な法的根拠はなく、校長の裁量に委ねられている。今回の判決はその裁量を広く認めた内容といえるが、子どもの人格や多様性を尊重する時代の流れに逆行していないだろうか。原告側は控訴を検討するという。

 訴状などによると、元生徒は生まれつき髪の色が薄く、保護者も入学時に配慮を求めた。しかし髪の染色や脱色を禁じた校則に基づき、教員から黒く染めるよう再三指導され、精神的苦痛から不登校になったという。

 判決は、校則について「正当な教育目的で定められた合理的なもの」、学校の「裁量の範囲内」とした。頭髪指導についても、学校側が元生徒の髪の色が黒だと認識していたなどとして、「違法とはいえない」とした。元生徒の地毛が茶色かどうかについては、なぜか判断しなかった。

 一方で、元生徒が不登校になった後、学校が名簿から名前を削るなどした対応は違法とし、府に33万円の賠償を命じた。

 頭髪指導を巡る最高裁の判決では、パーマを禁じる校則を「不合理なものとは言えない」とした例や、強制的に黒く染めさせる指導を「教育的指導の範囲内」とした例がある。学校の裁量を広く認める司法判断が定着しているようだ。

 だが、そもそも身体的特徴は人それぞれである。多様性を学ぶべき学校で、同じ格好をみんなに強制する指導の在り方は差別にもつながりかねず、人権侵害に当たるとの指摘もある。

 グローバル化が進み、多様な文化の下で育った児童生徒も少なくない。外国籍の子や性的少数者、ジェンダーなどへの理解も少しずつだが進んでいる。校則でも配慮すべきではないか。

 今回の訴訟が社会に一石を投じたことは間違いないだろう。下着の色や髪形まで細かく定める、理不尽な「ブラック校則」や指導の問題が広く認識されるきっかけにもなった。

 府教育庁はこの訴訟が提起された2017年、校則の点検などを指示。一部の高校では、頭髪を染めるなどした場合、帰宅させた上で染め直させる「再登校指導」といったルールが廃止されている。

 子どもの権利を守る観点は欠かせまい。千葉県立高では生徒の髪に黒染めスプレーを吹きかけた指導が問題となり、弁護士会が「体罰に準ずる人権侵害に当たる」として警告書を出している。佐賀弁護士会は、県内の公立中の校則を検証し、合理的でないものについて見直すよう県教委に提言した。

 学校生活を送る上で規則を設け、順守を指導することは一定に必要だろう。しかし、管理する側の視点を一方的に押し付ける校則や、人権を尊重しない指導があってはならない。

 その校則は何のためなのか、理にかなっているか―。子どもや保護者も含め、議論につなげていく必要がある。

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