コラム・連載・特集

原発事故「国にも責任」 高裁判決の重さ自覚を

2021/2/22 6:45

 原子力災害では国内最悪となった東京電力福島第1原発事故から来月で10年になる。高裁で再び、国にも事故の法的責任があるとの判決が出た。

 国は、その重さを受け止め、安全確保のため果たすべき役割と、深刻な事故を防げなかった責任を改めて自覚すべきだ。

 事故で福島県から千葉県に避難した住民らが損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決である。東京高裁は、東電だけに賠償を命じた一審の千葉地裁判決を変更して、国の逆転敗訴とした。

 東電と国に賠償を求める同様の集団訴訟は全国で30件に上る。高裁判決は3件目で、国の責任を認めたのは昨年9月の仙台高裁に続き2件目である。

 今回も最大の争点は、2002年に公表された政府の地震調査研究推進本部による地震予測「長期評価」に基づき、巨大津波への対策を講じていれば事故は防げたかどうか、だった。

 一審は、巨大津波の危険性は予見できたと認めたものの、仮に対策を講じたとしても間に合わないか、事故を回避できなかった可能性があると判断。国の責任は認めなかった。分かりにくいと言わざるを得ない。

 それに対し高裁は、まず長期評価は科学的信頼性があることを認めた。その上で、巨大津波は予見でき、東電が防潮堤の設置やタービン建屋に水が入らないような対策を取っていれば、津波の影響は相当軽減でき、事故の原因となった全電源喪失には陥らなかったと判断した。

 国に対しては、長期評価を考慮しなかったことを「著しく合理性を欠く」と指摘。東電に規制権限を行使しなかったことと事故との因果関係を認め、「違法」とした。説得力があり、同様の訴訟での一部判決への不信感を拭うことができそうだ。

 というのも、分かりにくい判決が他にもあるからだ。群馬県などに避難した住民らの控訴審で、東京高裁が先月出した判決もその一つ。国と東電に賠償を命じた一審の前橋地裁判決を取り消し、国の責任を否定した。

 その理由として、長期評価の内容が、同じ年に土木学会が公表した知見と合わず、巨大津波は予見できたとはいえないことなどを挙げた。政府機関より一学会の知見を重く見る判断はバランスを欠いていないか。

 しかも土木学会の知見については、福島沖で津波が起きるかどうか検討せずにまとめたという証言が公判で出た。信頼性を疑わせる内容にもかかわらず、判決には反映されていない。

 事故の背景への理解が乏しすぎる。国会の設けた事故調査委員会は「明らかに人災」と断じた。金のかかる津波対策を避けたがる東電と、規制する政府機関との長年の「なれ合い」で、事故対策がおろそかになったというわけだ。国と東電との緊張感のなさを厳しくチェックしてこそ、司法の役割が果たせるのではないのか。再発を防ぐことにもつながるはずだ。

 同様の訴訟の多くはまだ地裁で審理中だ。14件出た一審判決は、国の責任を認めるかどうか判断は二分されている。最高裁まで争うとなると、相当時間がかかる。避難者には耐え難いだろう。国はこれ以上訴訟を長引かせず、事故を防げなかった責任を潔く認めるべきだ。全ての原発被災者への早急な支援にこそ力を尽くす必要がある。

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

社説の最新記事
一覧