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接待問題の官僚処分 解明なき幕引き許せぬ

2021/2/25 6:45

 菅義偉首相の長男ら放送事業会社「東北新社」側から高額な接待を受けていた総務省の幹部11人がきのう処分された。

 利害関係者からの接待や金品の受領を禁じた国家公務員倫理規程に違反したとして減給などの懲戒や、訓告の処分である。行政の公平性への信頼を揺るがした責任は重く、当然だ。

 政府はこの処分で、倫理規定違反に関する調査を終了するという。だが、接待問題に幕引きをすることは許されない。

 多くの官僚が接待を受けた背景を明らかにする必要がある。許認可などを巡り、行政がゆがめられたかどうかなど、徹底的に解明せねばならない。

 「利害関係者とは思わなかった」「利害に関わるやりとりはなかった」…。総務省の調査に対し、接待を受けた官僚は口をそろえているという。しかし、いわば身内の調査への説明をうのみにはできない。

 というのも先に事実上更迭された同省局長の例がある。国会で当初、衛星放送に関する話題は出なかったと「虚偽答弁」。ところが週刊誌報道を受け、話題にしたことを一転、認めた。

 にもかかわらず、武田良太総務相は「行政がゆがめられた事実はなかった」と述べてきた。なぜそう断言できるのか。幕引きを急ぎ、政権へのダメージを抑えたい思惑なのだろう。

 総務省の調査では真相解明は期待できない。同省はきのう、副大臣を長とする検証委員会の設置を明らかにした。だが、独立性や透明性の高い第三者機関による調査が必要だ。

 菅首相にとっては家族が関わった疑惑だ。かばいだてせず、真相解明に尽くすことが責務である。できないのなら、国民の政治不信を一層深める。

 総務省の調査報告によると、接待は5年前から昨年12月にかけて当時同省幹部だった13人に延べ39回も行われた。審議官の1人は4回にわたり飲食代や手土産、タクシー代など計約11万円以上の接待を受けた。

 総務省幹部の接待が1人当たり2万円台までなのに比べ、山田真貴子内閣広報官への出費は際立つ。総務審議官だった2年前、1回で7万4千円もの飲食接待を受けた。一般常識に照らし、考えられない額だ。山田氏は菅首相が内閣広報官に抜擢(ばってき)。同省を退職しており、きのうの処分の対象外だった。

 接待攻勢には一体、どんな背景があるのか。東北新社などの衛星放送事業の会社は近年、インターネットの動画配信サービスに押され、環境が厳しい。そのため業界は人工衛星の利用料引き下げを求めていた。また東北新社の映画専門の子会社は接待を重ねた昨年12月に衛星放送の認可更新が認められた。

 首相長男らの思惑が透けて見えるようだ。では、官僚はなぜ接待を受けたか。政府は山田氏をきょう衆院予算委に出席させるという。他方、首相の長男ら東北新社の幹部も国会招致する必要がある。

 菅首相は「長男が関係し、結果として公務員が倫理規程に違反する行為をしたことは申し訳なく思う」と陳謝した。

 だが官僚だけが処分され、政治家は謝罪しても責任を取らないのは、森友・加計学園、桜を見る会の疑惑と同じだ。首相は前例踏襲を改めると断言したはずだ。自ら責任を取るべきだ。

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